IVUSA TIMES

日本最大級のボランティア学生団体IVUSAの素顔が読めるWEBマガジン

第50回【特集】平成28年台風10号豪雨災害救援活動

◯平成28年台風10号大雨災害

8月30日に岩手県大船渡市付近に上陸し、大きな被害をもたらした台風10号。史上初ともいえる進路で日本付近に長くとどまり勢力を強めたこの台風により、岩手県内では岩泉町と久慈市で20人が死亡し、現在も3人の行方がわかっていません。また、道路や農林水産関係の被害額は27日現在で1394億4328万円(調査進捗約6割)に上り、さらに拡大する見込みとなっているそうです。特に被害が大きい岩泉町では、29日午後6時現在、311人が避難所生活を強いられています。(参考:Yahooニュース 9月30日)

IVUSAでは災害が発生した直後から、会員やその家族の安否を確認します。被害状況の調査、会員への災害派遣日程のヒアリング、移動手段や備品の調達などの準備を始め、食事を含め自己完結型で活動ができるような体制が整えられるように準備が進められました。



◯活動内容

平成28年台風10号災害救援活動として、岩手県宮古市にて9月9日から先遣隊が、9月12日からは本隊も現地入りし、総勢66名で9月14日まで活動を行い、計14件のニーズを完遂しました。
被災地では主に民家の床下の泥の掻き出し、家財の運び出し、石灰による消毒などをしました。
なおこの活動は、公益財団法人車両競技公益資金記念財団の助成を受け行われました。



◯隊長の日本大学4年桝鏡今日子さんにお話を伺ってきました

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― よろしくお願いします。早速ですが、どんな活動をしましたか?

 私たちの活動した新里地区は、近くを流れている川が台風で氾濫して、その土砂が町に流れ込んで一帯が床上浸水してしまったところでした。泥水の床上浸水は、水が引いても床の上にはヘドロが残ってしまい、湿気で柱や壁を腐らせてしまいます。工事とか建て替えは大工さんにしかできないけど、学生が現地のためにやれることを考えて、ヘドロかきやお宅の消毒をしていました。




― ヘドロかきと消毒は大変でしたか?

やっぱり体力はある程度必要になります。活動中はひたすら被害に遭われたお宅の床板を上げ、床下に潜る。床下に潜る作業が特に若くないとできないというか、ヘドロもかなり重いし、全部土嚢に入れて家から出さないといけないので、そのヘビーな部分を学生が6から10人くらいのグループを組んで担当しました。その他のお宅の掃除などの比較的楽な作業は、一般のボランティアさんたちとも手分けしました。


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写真:民家での作業の様子。



― そうなんですね。行ったときの現地の人たちの様子はどうでしたか?

 災害が起きてから1週間後に現地入りをしたため、家の中は整理されて家具が退けられていましたが、現地の方々はもうそれで精一杯でとても疲れているなという印象でした。最初に先遣隊がうかがったお宅が90歳のおばあちゃんの家でしたが、そこのおばあちゃんは疲れ切って寝込んでいて、娘さん夫婦と一緒に暮らしている状況だったので尚更そう感じました。




― 現地の方は本当に過酷な状況だったんですね。

 うん。その中でIVUSAは必要とされているニーズに応えることができました。それに学生はみんな夏休みが終わって学校が始まる時期で、もうなかなか岩手には行けないのはわかっていたから、できる限りは全部やって行こうっていう気持ちで活動していました。私はみんなにへとへとになるまでは帰ってこないでくださいって言っていました(笑)。

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―少しでも力になるために全力を尽くしていたわけですね。先ほど一般のボランティアの方と言っていましたが、現地にはどれくらいのボランティアの方がいましたか?

災害が発生してから1週間後で、一番多い日で100人くらい来ていたかな。でもそれはIVUSA60人を合わせての人数で、IVUSAがいなくなると一気に人がいなくなってしまう現状があります。私たちはそれだけ現地でも多い人数だったので、まず先遣隊11人が現地に行って現地調査や作業をするお宅へ挨拶などをした。そして、本隊60人が来た時にスムーズに現場ごとに割り振って、1秒でも無駄にしないように大人数を管理できる体制で臨んでいました。これはIVUSAが24年間で行った災害救援活動や、その他プロジェクトで培ってきたノウハウがあってこそのものだと思います。




― 桝鏡さん自身は岩手の災害現場を見て何を思いましたか?

 水害は地震や火事のように民家の倒壊といったわかりやすい被害があるわけではなく、一見なにも被害が無いように見える事も少なくありません。だからどうしても一般的に忘れていき易いもので、ニュースに流れなくなると尚更な部分もあります。今回被害に遭われた場所は5年前に東日本大震災の被害を受けているから、有事の際の地域コミュニティが出来上がっていて、すごく助け合える関係を築いていました。例えばこれを東京に置き換えて考えた時、東京で同じこと起こったらどうだろう。少なくとも岩手で感じたコミュニティの力は無いと思う。でも日本に住む以上、台風とかゲリラ豪雨ってどこにいても起こりうるから、そういうときに災害現場での経験がある私たちが自分の地域・近所を守れるような存在になる必要があると思うんだよね。だから当事者意識を持ちながら活動していこうって心がけています。


― 大切な心がけですね。では隊員や一般の人にメッセージなどあったらお願いします。

 この活動が行われた時期はIVUSA全体が夏プロ(夏の活動)の終盤戦で、琵琶湖オオバナミズキンバイ除去活動が400人規模で行われていて、山形隊・青森隊が活動直後で、中国隊も活動中で、事務局も学生も人が出払っている状況でした。だからまず災害救援に向かえるのかという話から始めていて。

でもその中でみんなが予定をこじ開けて行くと言ってくれたり、行けなくてもできることをしたいと言って準備を手伝ってくれたり、動員に注力してくれたり、という風にちょっとずつ無理をしながら、今まで培ってきたものを生かしていった結果派遣する事ができました。本当にIVUSAが総力戦で行う事ができたと思う。私は隊長として取りまとめをしただけだと思っているので、みんなの力が無ければできなかった活動でした。



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写真:今回の岩手隊のみなさん。



― 災害救援の活動は突然起こりますし、そういう意味でもひとりひとりの力が大切ですよね。

 うん。IVUSAってすごいよね。現地との調整や参加者を募って、災害起こってから1週間経たずに現場に行っちゃうんだよ(笑)。現地に到着してすぐに作業を始められるのは、日ごろの研修の成果でもあるし、24年間分の経験があるからでもある。そのノウハウやチーム力をこの総力戦になったときに改めて感じました。IVUSAはそういった武器を持っているから、もっとたくさんの人に災害救援活動には来て欲しいです。私も1年生のときに初めて災害救援活動に行ったときは怖かったけど、そこで自分にもできることがあるって感じたから。特に水害の場合は女子の方が活躍できることもある(笑)。だから少しでも現地のことを想うなら安心してついて来て欲しい。
 

― 改めてIVUSAの力を感じました。本日はありがとうございました。



インタビュー:長谷川千尋(日本大学2年)
編集・カメラ:山田 充(日本大学3年)


~編集後記~
昨年の北関東東北の水害、今春の熊本地震に続き、今回も災害救援活動の隊長にお話を伺いました。IVUSAの凄みはこのような突然の事態が起きたときこそあるんだなあと、自身もIVUSAに所属しながら実感します。一見、自分の知らないところでの出来事のように思える災害ですが、もし日頃の備えがあれば大切なものを守ることができるなら―。当事者意識とはそういうところにつながるのだと思いました。