IVUSA TIMES

日本最大級のボランティア学生団体IVUSAの素顔が読めるWEBマガジン

第57回「本を読むような作業」木須航洋さん

今回のIVUSA TIMESは、2月23日より始まる、「フィリピン減災・環境保全活動」のプロジェクトマネージャー、京都産業大学4年の木須航洋さんです。フィリピンで学生ができることとはなんでしょう?木須さんの想いと合わせてご覧ください!

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― 最初に自己紹介から。

 京都産業大学京都上賀茂クラブ4年の木須航洋です。よろしくお願いします。


― お願いします。今回はフィリピン隊のリーダーとして取材するんだけど、どういう背景があってリーダーやろうって思ったの?

 個人的な夢なんだけど、自分が先頭に立って夢に1歩でも近づけたらなって思ってリーダーになりました。フィリピンは日本と同じように地震も台風も多いし、そこに共通点を感じていて。同じ悲しみを知っているからこそ、なにかできるんじゃないかなと思っています。僕らの「減災」という活動によって誰かが笑顔になってくれればいいなって。僕はそのきっかけにちょっとでも関われたら幸せだなって思って、リーダーになりました。


― おおお、素敵な夢ですね。

 いやいや、理想主義だけどね。


― 恥ずかしながら「減災」っていう言葉を初めて聞いたんだけど、例えばどういうことをするの?

 防災と減災の意味が混同すると思うんだけど、防災っていうのは災害のために備えるもので、減災は災害が来ることを前提としていかに被害を抑えるかっていうものかな。


― ふんふん、なるほど。それをIVUSAではどういう風に関わっていくの?

 IVUSAでは、現地の学生や住民の方に減災のために何ができるのかっていうワークショップを開いたりするよ。あと、台風が来た時に水かさが増すんだけど、それを防ぐために今回の活動では用水路を作ったりします。


― それは今回の活動のメインが「減災」だから?

 減災と環境保全活動がメインだね。エコブリックスって言うんだけど…。


― エコブリックス…。

 知らないっすよね?


― はい(笑)。

 簡単に言うと、フィリピンって結構ゴミが散乱してるんだよね。分別の習慣がないから道路にゴミの山があったりして。そうすると、台風が来て水かさが増した時にゴミがぶわっと流されるから家が汚れたり環境に悪影響だよねって。


― そうだよね、菌を持ってるから繁栄しちゃうとね…。

 だから、その落ちてるゴミを拾ってペットボトルの中に入れる。詰め込む感じ。それで、コンクリートに埋め込んで、レンガのようなブロック状にして行く。花壇にするんだよね。ゴミを捨てる習慣づけというよりも、ゴミの再生利用の意味合いが大きいかな。


― 再生利用、なるほど。現地の方と話すときは何語で話すの?英語?

 基本英語なんだけど現地の人は英語が話せない人が多いから、現地の高校生に間に入ってもらって、通訳をしてもらうんだ。英語で話して、それをタガログ語で伝えてもらって、またそれを英語に翻訳して返してくれるって感じ。

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― 現地の方と話して気になったことはある?

 気づきとしては、行く前は全然防災の知識とかないんだろうなって思い込んで行ったんだけど、実際アンケートをとってみたらそんなことなくて。むしろ自分たちと同じくらいの危機感を持っていて。意外な発見だったな。


― 活動を通して、なにか反響はあった?

 そうだね、活動の最終日に俺たちのカウンターパートの方が言ってくれたんだけど、現地に足を踏み入れたこと自体が意義のあることだって。ニュースでみる現地の様子ではなくて、現地の生の様子を目で見て肌で感じて耳で声を聞いて、いろんな気づきがある。そのこと自体が素晴らしいことだって言ってくれて。自分はそこまで考えてなかったなって気づかされたんだ。自分はひとつのプロジェクトとして行ったけど、意外にもそういう感謝をされて、俺でも人の役に立ってるんだなって。


― うんうん。報道では情報に偏りがあったりするから、自分の目で見るのは大切なんだなって話聞いて改めて思ったよ。最初にさ、夢があってリーダーになったって言ってたじゃない?それは1次隊のころから意識があったの?

 そうだね。夢もあったけど、リーダーそのものもやってみたいなとは思ってました。それは自分への自己投資かな。挑戦ですね。


― 活動に関わる期間が一番長いけど、挫けることとかない…?

 割とコンスタントに気持ちは保てる方かな。IVUSAに入ってわかったことなんだけどね(笑)。やっぱり責任感もあるし、夢が大きいかな。その夢のためならどんなにきつくても頑張ろうと思うし、なにより参加してくれる隊員への「いい学びの場」の提供とかを考えると凄くわくわくする!


― やっぱりリーダーって凄いなあ。活動全体で気をつけてることはある?

 そうですね。1次隊の反省として、フィリピン人の気質を理解せずに催促の連絡をすることが多かったので、そういうところも考慮しつつ、焦らずに行きたいですね。現地あっての僕らなので(笑)。


― 臨機応変に対応できたらいいよね。今回の活動も10日間なのかな?どんなスケジュールなの?

 まず1日目はマニラに行って現地のコーディネーターの方と交流して、タガログ語を教えてもらって。2日目は観光をして隊員にフィリピンの風土を知ってもらう。3日目はラオー市に移動して、ホームステイしながら作業をする感じかな。1、2日目でどれだけフィリピンのことを知れるかが重要で、今回は現地の言葉とか歴史に慣れてから現地入りができるのでいい雰囲気が作れると思います。


― 大切だと思う。行ってすぐ活動になると社会問題にとらわれがちになるけど、ちゃんとフィリピンのことを知る機会があれば広い視野で見られるもんね。観光なの?って思う人もいるかもしれないけど、観光も勉強のひとつだと思う。

 そうだね。あと、今回意識したこととして宿題をめっちゃ出したんです。


― うんうん。例えばどんなの?

 最初の固いイメージを払拭するために、まずは自分の好きな角度からフィリピンを捉えてもらったんだ。スポーツや歴史、観光に行くマラカニアン宮殿と英雄墓地についても調べさせて、それを現地で生で見るっていう流れ。そのあとの宿題では、フィリピンと日本の防災対策を比較したり貧困と災害の関係性を調べさせて、ワークショップやその他活動の前提知識となるようなことを出しましたね。

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― 調べた後に自分の目で見るわけだから、凄く活動に活かされそうだね。

 そうだね。それをしようと思ったのも俺の1次隊の反省と後悔が根本にあって。1次隊は初フィリピンだし何も考えずにエントリーしたの。でも、現地のことを何も知らずに入っちゃったから、もっと前提知識とか社会背景を知っていたら、もっとすんなりいろんな発見とか気づきがあったのかなと思っていて。じゃあ自分がリーダーをやるときは、隊員にはそういう後悔をさせたくないなという思いで宿題を出してたんです。


― なるほど。それを踏まえて、今回どんな隊にしたい?
 そうねぇ、やっぱ自分のことだけじゃなくて隣の人、これは日本人の班員もそうだしフィリピン人にも関心を向けて行動できる、一歩前へ行動できるってのを目指してます。やっぱり人間って自分本位なところがあって、でも僕らってフィリピン人の誰かが笑顔になるために、命が救われるために行くわけで…自分のことだけにとらわれていては、僕の夢もそうだし隊の目的もフィリピン隊が目指したい方向性も達成できないだろうと思っていて。そして、思っているだけじゃなくて一歩前へ行動に移す、例えば積極的にコミュニケーションをとったり、事前にどんな防災対策や環境問題があるのかを学ぶことでより良い活動になるんじゃないかなと思っています。


― 一通りリーダーとしての話は聞いたので、少し話題を変えたいと思います。前になにかの海外プロジェクトで、木須くんが現地の人の前で一発芸をやってた動画を見たの。それがウケててすごいなあと思ったんだけど…。

 ウケた?俺が一発芸!?あ、俺の記憶が正しければさっき話した現地の小学校で台風の授業をした時のやつかも(笑)。ココナッツの木役で出てきたんだよね。俺。


― どういうことなの(笑)。

 ココナッツの木はフィリピンの方にとって大切なもので、生活の一部だったり、収入源なんだよね。そのココナッツの木が台風で倒されようとしてる風景を描きたかったのかな。それで、ココナッツ役で後ろから登場したよね。その時にダースベーダーの音楽を言いながら登場したらウケた。


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― 本当にすごいウケてて、海外の人たちともそういう交流の仕方あるんだなと思ったんだ。

 あるある。言葉で伝えるのは難しいから、目で見て楽しめる交流の仕方を考えるのもあるね。僕がそういうのやりたいってのもあるかもしれないけど(笑)。


― 今回も何かするの?

 いや今回は特に。でもマネージャーっていう肩書きがあるからなあ〜。どうなんだろう。でも俺よりは隊員にそういう機会を作りたいなって思いますね。僕が前に立つのはいいです。はい。


― 他には何聞こうかな。

趣味でいいんじゃないかな。話しやすいし。


― プライベートが全然想像つかないんだよね(笑)。

 そう、よく言われるんですよ。普段は本読んでます。本とラジオ。この2つが僕の生きがいですね。本は小説から新書、政治、歴史書、心理学、自己啓発とかジャンルは色々です。

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― そうなんだ。最近読んで印象に残ってる本とかある?

 どう行こうかな。種類によってこの人の性格って出るじゃん。ちょっと俺どんな本読んだか確認していい?まとめてあるの。えっと、ベタに行きますと、『星の王子さま』。


― 少し前にテレビで解説してるの観た。

 …変えようか。


― ちょっとベタすぎたかな(笑)。

 わかった。じゃあはい!『47歳の音大生日記』っていう池田理代子さんの本です。『ヴェルサイユのバラ』の作者さんなんだけど…。


― うんうん、聞いたことはある!

 その人は幼い頃から舞台女優に憧れていたんだけど、その夢を諦めて漫画の道に進んで爆発的に大ヒットしたの。でも、幼い頃からの夢を諦めきれず47歳にして音大生になるんだよね。その入学してからの4年間の日記がこの本なんだ。47歳で入ったから4年後は51歳。51歳っていうのは普通のオペラ歌手が引退を考える時期なのね。それでもやろう、自分の夢を歳関係なく追いかける池田さんのエネルギッシュな姿勢が俺は凄いなって感心して。池田さんの半分もまだ歳いってないけど、そんなエネルギッシュな力があんのか?とか、夢を追いかけられているのか?って考えさせられるような内容でしたね。


― それはもう、是非皆さんに読んでいただきたいですね…!

 うん、面白かったですよ普通に。「夢」ってところで、IVUSAのみんなに合うと思う。


― じゃあ、最後に。IVUSAとはなんでしょう。

 僕にとってIVUSAとは「本を読むような作業」だなと思っています。ただ何も考えずに文字を追って本を読み切ることはできるんだけど、ぼんやりと字を追うようにIVUSAの活動をやっていても何も身につかないよね。でも、じっくり作者の意図や心情を想像しながら読むように、IVUSAでも活動の背景とかどんな想いで現地の人がいるのかを理解した時に、初めて自分の新たな視点として身につくんじゃないかなと思っています。そうなると自分の視野・価値観ってのはたくさん本を読むように広がっていくようだと思っているので「本を読むような作業」だなと。一つひとつの活動にどれだけ参加意義を見出せるかで、自分の考え方や価値観、捉え方は無限に変わってくるのかなと思いますね。

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― 「本を読むような作業」かぁ…とても素敵だと思います。今日はありがとうございました。


インタビュー・編集:杉山佑希(日本大学4年)
カメラ:渡邊茉理(神奈川大学3年)



〜編集後記〜
プロジェクト中の雰囲気とは変わり、取材中1つ1つ言葉を選びながらゆっくりと話す姿が印象的でした。また、本の話になると関西弁になるところから、本当に本が好きな気持ちが伝わって来ました(笑)