IVUSA TIMES

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第83回【特集報告会第1弾】~災害シミュレーション劇の役者に迫る~近藤七泉さん、後藤圭祐さん

第83回IVUSATIMESは、今月5月27日に東京で開催される「東日本活動報告会」で、災害シミュレーション劇が行われます。その出演者の代表として、大妻女子大学の近藤七泉さんと国士舘大学の後藤圭祐さんに取材しました。今まで知ることのなかった「演じる側」の真意とは?


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―自己紹介お願いします。

(後藤):はい、国士館大学体育学部スポーツ医科学科2年後藤圭祐です。

(近藤):大妻女子大学家政学部ライフデザイン学科2年近藤七泉です。


―よろしくお願いします!今日は災害シミュレーション劇の演者さんにインタビューするんだけど、どうしてそれをやろうと思ったの?

(近藤):クラブの役員のみなさんを通して、いきなり監督さんの連絡先をいただきまして。LINEで監督さんから「今回劇の監督を…」と言われたときに、「あ、劇なんだ」と知りました。


―その時初めて知ったの!?

(近藤):もともと先輩方から推薦していただいていたらしいのですが、本当に知らなくて。いきなりといった感じですね(笑)。


―自分から志願したというより、推薦って感じなんだね。

(近藤):でも、私自身、去年の報告会に行けなかったから、そもそも劇があることも知らなくて。先輩からお話をいただいて、「挑戦してみようかな」と思ったのがきっかけです。

(後藤):僕もクラブマネジャーさんから、「劇出てみない?」と言われて。最初は断ったんですけど。


―断ったの(笑)。

(後藤):そのあとに、去年劇を演じられた先輩や、色々な人から連絡をいただいたのですが、そこでもまた断ってしまいました。


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―また断ったの(笑)!?

(後藤):まぁ(笑)。


―最初断ったのに、その気持ちが変化したきっかけは?

(後藤):断りにくかったからです(笑)。


―そうなんだ(笑)。意外だな~。

(後藤):そもそも、1年生の途中からIVUSAに入ったので、報告会自体一度も行ったことがなくて。


―2人とも報告会についてあまり知らなかったんだね。実際劇やってみてどう?

(近藤):想像していたものと全然違いましたね。最初に去年の劇本番の動画を見るんですけど、プロの劇団の人たちかと思っていました。後でそれがIVUSAの先輩なんだと知って、単純に「すごいな」と。

そう感じながら、実際練習していくうちに、段々と新しい自分を発見することができるんです。「こんなに声出せるんだ」「こんなに悔しいと思えるんだ」とか。高校の部活みたいな感じですね(笑)。


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―確かに、私も初めて見たとき、「プロみたいだな」「こんなにら真剣にやっているんだ」と、その迫力に圧倒されたな。

(後藤):僕はちょっと怖いなと感じました。「自分たちも同じようにできるのかな」と。全く知らないメンバーと練習する不安もありましたし、僕自身最初はやる気があるとは言えなかったので、正直浮くかもしれないという実感はありました。


―確かに、そういう気持ちもあるかもしれないね。実際に練習していて、「ここが大変だ」と思ったことはある?さっき「声出すのが…」って言っていたけど、他にも演じていて大変だなと思うことがあったら。

(後藤):練習に全員揃うことが少ないので、動きが確認しづらいのと、来られないメンバーの代役をしながら進めるので結構大変ですね。あと、練習場所は国士舘大学と東洋大学の2ヵ所なので、移動時間もかなりかかってしまうことですかね。


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カメラで写真を撮っていたTIMESに気づいてくれたみたいです


―どれくらいかかるの?

(後藤):家が多摩の方なので1時間くらいです。


―やっぱりそういうところは大変だよね。
(近藤):そうですね。でも私は大学まで定期があるので、比較的楽ですよ。それと、体中にアザができるんですよ。


―え!?

(近藤):力の強い男子たち同士が取っ組み合いをする演技もあるんですよね。だから、着替えを持ってこなきゃいけなくて。

(後藤):僕は今パーカーを着ているんですけど、演技の最中にワイシャツだとボタンが飛んで壊れちゃうんですよ(笑)。だからいつも着替えているんです。


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―そんなハードなんだ!

(近藤):私の場合、床にうつ伏せになるので、激しい動きをするときは、自分の力で自分の体を床に叩きつけているので、体中にアザができていて。先輩にも「アザはつきものだから」と言われました(笑)。


―アザができても練習はしなくちゃならないよね?

(近藤):治ってまた新しくでき…の繰り返しですね。


―勢いよく膝をつく場面や、みんながバタバタと集まったり、叫んだりする場面は体力がいるよね…。なんでそれが耐えられるの

(後藤):演者としてこれが仕事なんで(笑)。中途半端だと自分たちが恥をかいてしまうので、一所懸命取り組んでいます。

(近藤):私はめちゃくちゃ負けず嫌いなので、アザに痛がっている自分が嫌だなと(笑)。みんなきっとそうですよ。だって、胸骨圧迫しているときは膝をずっとついている訳ですからね。


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初めて練習風景を見させていただきましたが、その迫力に思わず息を吞みました。

―そうなんだね。勢いよくやらないと演技にはならないところも難しいし…。そうなるとコミュニケーションって大事だよね。ちなみにメンバーの仲は良い?

(近藤):最初はみんな遠慮があったんですけど(笑)。でも練習していくうちに、遠慮していると演技にならないから、いつの間にか無くなって心が開けた感じですかね。


―ちなみにメンバーの第一印象はどうだった?じゃあお互いに第一印象は(笑)?

(近藤):大きい声を出せなそうだなと思いました(笑)。おとなしそうじゃないですか(笑)。

(後藤):そういうこと言うんですか(笑)。華奢で可愛らしいなと思いました。あと、静かそうだな、大きい声出せるのかなと。僕も一緒ですね。


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―割とほぼ全部同じ言葉だね(笑)。でも、第一印象って変わってくるよね。

(近藤):みんな大きい声を出せなそうな印象があって(笑)。最初は「声が小さい」と怒られることもしばしば。


―報告会当日はすごい大きな会場でやるからね。1回行ったことある?

(後藤):まだ行っていないです。国士舘大学のホールでは練習したのですが、それでも全然響かなくて。その倍の広さとなるとちょっと不安です。


―どう?今は声が届きそう?

(後藤):まあ、どうなんですかね(笑)。人が入ったら雑音でかき消されちゃうかもしれないけど、本番まで届けられるように頑張ります。


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今月12日の様子。何か制作しているようですね…。


―そうなんだね。役は二人ともどんな役をやっているの?ネタバレになっちゃうか。

(後藤):ヒロインに片思いしている役です。


―おおー!!(長谷川・髙橋)。役はどうやって決めるの?

(後藤):監督が勝手に。

(近藤):勝手にじゃないよ。監督さんと助監督さんが、それぞれ演者個人に面談があって、そこで決まるんです。


―第一希望とか第二希望とか聞かれた?

(後藤):通らなかったですね。

(近藤):私はヒロインの役です。でも、監督さんからは、第一希望は聞かれずに、「自分が災害現場行ったらどう思う?」ってことしか聞かれなくて。

今の私では人を助けることができないと思い、「パニックになると思う」「助ける側にはいられない」と答えました。そうすると監督さんが、「じゃあ、助けられる役の方が良いのかな?」と聞かれたので、その時「いや、私は助ける役に挑戦してみたい」とお伝えして。

でも実は、「本当は今のヒロインの役をやってみたい」という本心があって、自身が無くてそれを隠していました。でも、それを打ち明けずに、助ける側に回りたいと言ったんですよ。そしたら監督さんに本心を見破られちゃって。


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―おお!すごい!

(近藤):本当にすごいですよね。


―ヒロインってすごいよね。劇の終盤鳥肌が立ったもん。演じる上で、実在する俳優さんで誰がいいかなっていうのはありますか。(髙橋)

(後藤):イメージはありますよ。2人とも映画の「海猿」が好きで!

(近藤):それで仲良くなったんですよ。

(後藤):伊藤英明さんが胸倉つかむシーンとか、劇でもちょっと意識しながら…!

(近藤):でも私は自分の演じる役に似ている憧れの女優さんがいなくて…。


―そうなんだ!じゃあ他に自分で練習していることはある?

(近藤):去年のヒロイン役の先輩が演じていた動画を見て練習しています。なので、先輩達を超えられるように、去年とは一味違った劇にしたいです。


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―とても楽しみですね!ところで、みんなから見て劇監督はどうですか?

(後藤):めちゃくちゃ優しくて良い監督さんです!優しくて僕たちのことをよく考えてくれるいい監督だと思います。


―すごい典型的な答えが返ってきたけど(笑)。今までで怒られたこととかないの?

(後藤):僕はそれも愛かなと思っています(笑)。


―ちなみにどんなことで怒られた?

(後藤) (近藤): …。

―全然話さなくなったじゃん(笑)。

(後藤):時間を守らなかったときか。それだけです。

(近藤):全力でやらなかったとき。あとは、危機感を感じてないっていうのが伝わったときとか。


―監督っぽいね。芝沼頑張っているよなぁ。

(近藤):でも、いつも愛のある怒り方というかね。

(後藤):心理学者みたいな諭すような。


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―ちなみに演じていて、どんなことを観客に伝えたい?意識していることとかがあれば。

(近藤):舞台の上にこうやって立って演じているのは、みんなと同じ学生なんだよっていうことや、自分自身と向き合い変われることの大切さですね。

観客の人たちは、もちろん私の過去を知らないけれど、最初からこういう感じではなかったんだよっていうのを伝えたいです。災害シミュレーション劇を通して、「行動する勇気」を伝えられたらなと。それは劇のメンバー同士で共有していることです。

いつ何が起きるか分からないけど、もし最悪の事態が起こってしまったときに、自分はただ見ているだけなのか、それとも助けようとすることができるのか、っていうのを考えてもらえるような劇にしたいですね。

(後藤):僕も一緒ですが、止血、搬送は誰でもできる処置なので、救急隊が到着できるまでにできることがあることを多くの人に伝えたいと思っています!


(近藤):劇の時も救急隊目線ではってよく言っています。台本とかも変えたりして。


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―そうなんだ。なんで救急隊目線なの?

(後藤):大学で勉強している内容が救急医療のことなので。僕自身普段から学外で一般人向けに、※BLSや止血、防災教育に取り組んでいるんです。

だけど、IVUSAは4000人もいて、なおかつ独自の危機対応講習(CMT研修)も受けているのに、それを理解できず教えられない人が多くいるような気がして…。

これから高齢社会が進んでいく中で、一般市民にも救急活動を扱えることが必要な時代がきます。だから、そういう人たちも為にも僕は基本的な救命方法を教えて、日本のために尽くしたいと考えるようになりました。

※BLS…Basic Life Support(一次救命処置)の略称。一次救命処置とは 、急に倒れたり、窒息を起こした人に対して、その場に居合わせた人が、救急隊や医師に引継ぐまでの間に行う応急手当のことを言います。


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―たしかにそうかもね。最近、私も消防署で救命講習を受けたんだけど、BLSで午前中全部使ったなあ。

(後藤):そうなんです。たしかに安全管理上搬送法を知っておくことは大切です。ただ、BLSと搬送を天秤にかけた時、BLSの方が大切なのではないかと思います。


―そういう視点いいね。

(近藤):初めて聞きました(笑)。こんなに何かについて熱く語っている姿。

(後藤):今度また熱く語るよ。


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―まあ。IVUSAで教えているのはリスクのこともあるからちょっと違うけどね。じゃあ最後に、今回は「あなたにとってIVUSAとは?」ではなく、「あなたにとって災害シミュレーション劇とは?」を教えてください!

(近藤):『ニュースに映らないようなところを見せられるところ』。

日本のニュースって、災害現場を移さないじゃないですか。けど、海外では違うんですよね。それは日本のメディアが映さないことで守っているモノもある反面、守ってしまっていることで現実味がないという一面もあると思います。

だからこそ、災害シミュレーション劇で災害現場の現実を少しでも伝えたいです。

(後藤):『命を助けることの難しさを伝える場所』。

助かる命あれば、助からない命もある。災害シミュレーション劇を通して、IVUSA以外でも応急処置をやろうって気づける機会になればいいなと思います。


―今日は劇の練習で忙しい中、取材受けてくれてありがとうございました!

(後藤) (近藤):ありがとうございました!!


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劇出演者のみなさん



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「しらくポーズ!?」


インタビュー:長谷川千尋(日本大学4年)
カメラ:髙橋諒(神奈川大学3年)
編集:髙橋諒(神奈川大学3年)

~編集後記~
今回の記事はどうでしたか?おそらく劇の役者にインタビューするという試みは初めて。
「劇」というと、私自身演劇は小学校の学芸会までの記憶しかなく完全にド素人に等しいです。しかし、大学生である彼らの演技での迫力に圧倒されるばかりでした。
本番まで数か月間練習を毎週積み重ねていると聞きましたが、そのおかげか練習時間外での彼らの仲の良さや、元気の良さには羨ましいものを感じる限り。「高校の部活みたい(近藤さん)」のようで、なんだか懐かしく、あの頃に戻れるような、そんなことを考えながらパタパタとキーボードをたたく毎日です(髙橋)。