IVUSA TIMES

日本最大級のボランティア学生団体IVUSAの素顔が読めるWEBマガジン

第93回「きっかけを与えてくれる場所」松村航平さん

第93回IVUSATIMESは、中央大学日野クラブ3年松村航平さんです。

今回のテーマは「フェアトレード」。

IVUSA史上初の取り組み!2018年12月に東京日野クラブが開催したフェアトレードイベントについてお聞きしました!ゼロから企画を作る上で、最も重要になるという意外な〇〇とは!?フェアトレードを通して社会問題解決への視点を広げる新たな展開が見えてきそうです!


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―この前、東京日野クラブのTwitterで、フェアトレードのイベントを開催したことを東京新聞に取り上げられたっていうツイートを見たんだけど、どうして今回フェアトレードの地域事業*1をやってみようと思ったの?

 フェアトレード*2に興味を持ち始めたきっかけから話すと、去年英語の授業で、たまたまプレゼンを担当した内容がそれだったんだよね。そのためにちょくちょく調べていくうちに、日本って欧米の国に比べて、まだフェアトレードについて知られていないんだなって知って。そもそもフェアトレードって聞いたことある?


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写真:11月29日東京新聞にて今回のフェアトレードのイベントが取り上げれています!写真左が松村さん。


―聞いたことはあります(笑)。(三井)

 でも、大学でもみんなが知っている訳ではないんだよね。でも、やっぱり知られるべきだよなって思って。フェアトレード問題を解決することって国際協力のひとつだし、純粋にボランティアっぽいなーって。せっかくIVUSA入っているし、「じゃあやろうかな」と(笑)。


―そうなるとIVUSA史上初?かもしれないね(笑)。僕も調べてみたんだけど、日本であまり知られていない現状の背景にはフェアトレードに積極的な地域が少ないってこともあったりするんだよね。神奈川県だったら、逗子市とかはフェアトレードタウン*3なんだけれども。

 そうだね。逗子の他にも有名なところは熊本とか名古屋とか。実は数えるほどしか日本にはフェアトレードタウンが無いんだけど、欧米の国、例えばイギリスとかはほぼ半分以上の自治体がフェアトレードタウンで。その他にも、世界中のスタバってフェアトレードのコーヒーを扱っているんだけど、日本のスタバで売ってるのは1種類しかなくて。


―そうなんだ!初耳です。

 別に俺スタバで働いている訳ではだけどね(笑)。フェアトレードの認知度が高い国だと、めっちゃ色んな種類のコーヒー売ってるの。
 そもそも欧米の人のほうがフェアトレードの概念を知っているし、もともと寄付っていう概念が日本人より欧米の人のほうがあるんだよ。それなら日本人より欧米の人の方が買ってくれるから、それに合わせて色んな種類のコーヒーが並んでいるんだよね。去年くらいに中大にスタバできたの知っている?


―まじか(笑)。それも初耳(笑)。

 俺はマジで吉野家のほうが良いと思うんだけど(笑)。その他にも中大にフェアトレードに関するサークルがあるのね。そのサークルと中大のスタバが協力してフェアトレードの会みたいなのを開いていて、その時間空きコマだったから個人的に行ってみたんだけど普通に楽しかった!そこでフェアトレードのクイズ大会があって、そこで勝っちゃったり(笑)。
 参加してみるとフェアトレードが日本で広まりつつあるような感じはしたかな。認知度は上がりつつはあるんだけど他の国と比べるとねっていうのはあるね。東京のスーパーでもフェアトレード商品は置いてあるんだけど、注意して見ないと気付かないようなレベルだよね。


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―日本で商売としてもフェアトレードが広まりにくい理由があるんだね。それを広めるために、この前開催したフェアトレードのイベントはどういう内容だったのか知りたいな。

 展示が主なメインかな。フェアトレード以外にもIVUSAのことや日野クラブのことも展示していたかな。あとは、実際にフェアトレードの商品を受注して売るんだけど、パッケージに一工夫したんです。


―パッケージ?

 商品パッケージのデザインをIVUSAの他に日野クラブの里山事業や子ども事業でお世話になっているカウンターパートのみなさんにも考案してもらって。子ども事業で一緒に遊んでいる地域の子どもたちも考えてもらって、とても素敵な絵を描いてもらいました!


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―あんまり固くなくて楽しそうな感じだね。みんなで一緒に楽しむというか。

 そう!もとあるつながりって良いじゃん、純粋にさ。本当はもっと地元の小学生も巻き込んでやりたかったんだけどね。来年は一緒にやりたいなーって思う。
 あとはフェアトレードの紅茶やチョコの試食も用意して。紅茶は3種類くらいかな。展示を観てもらったあとに、「実際に試食してみませんか?」っていう流れで試食してもらって、そこで地域の人と会話が弾んだりしたのが一番楽しかった。子どもたちもめっちゃ来て一緒に遊んだりしながら(笑)。
 会話の中でイベントの感想を聞きながら、そのあと「ぜひ買ってみませんか」じゃないけど、フェアトレードを知るきっかけ作りとして商品をおススメさせてもらったりしたかな。


―学生とか地域の小学生とか、色々なジャンルの人たちと一緒にフェアトレードについて楽しく知ってもらおうというか、そういう仕組みって結構大切だよね。

 ただ広めるだけじゃなくて試食とかで実際に興味を持ってもらえるような工夫は大事だしさ。やっぱりフェアトレード商品って他の商品よりも値段が高いんだよね。高いのに美味しくなかったら買いたくなくなっちゃうから、試食で美味しいものなんだって知ってもらって、「実はスーパーにも売っているんですよー」とか「日野市のこういうカフェでもこういう商品を扱っているんですよ」とか喋りながら、それを手に取って喜んでもらうことが一番の理想かな。
 展示内容も、俺たちがフェアトレードの商品を買うことによって実際にお金がどう使われているのか、具体的に生産者にどんな良いことがあるのか、そういう背景をきちんと説明することが大事。だからこそ買おうと思ってくれるきっかけになるのかな。


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写真(上下):12月に開催したフェアトレードのイベント中の様子。松村さんは、まだまだ目標の数値には達していなかったと話されていました。反省を活かして来年に繋げたいと意気込み十分です!


―結果的にそういう姿勢や努力が、公平な取引の実現につながることになるよね~。

 フェアトレードって「生産者のため」っていうのは結構広く知られているんだけど、他にも生産者の「地域」のためにも使われるのね。
 例えば、近くの井戸とか学校を作ったり、生産者だけじゃなくてその地域の発展にも使われている。これってあんまり多くは知られていないことだけど結構大事なこと。だから、生産者のためって思われがちだけど、実はその周辺の地域のためにも使われているんだよ。


―フェアトレードの中には確か熊本地震の復興を支援するために、熊本産のものを熊本で買って熊本を盛り上げましょうっていう国内フェアトレードっていうジャンルもあるみたいなんだけど、IVUSAでやっている国際協力や地域活性化に通じる部分があるというか。

ーそこで、今回イベントの作り手として取り組んでいて、IVUSAとしてのノウハウや経験を使って、どういう風に当日迎えたの?

 難しいな。自分たちができることってフェアトレードの概念を広げることだと思うの。広めることが発展途上国の生産者の人たちのために一番なると思っていて。そこでIVUSAとして、人数が4000人もいることを使うべきなのかなと(笑)。4000人ひとりひとりが少しでも広めればだいぶ変わると思う。
 IVUSAの国際協力として現地に行って学校建てたり、インフラ整備したり、街頭募金するのももちろん素晴らしいけど、もっと他の方法があるんじゃねーかなって純粋に思う。


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―フェアトレードを通して活動することも国際協力の一部っていうことだよね。

 そうだね。そのひとつの方法としてフェアトレードもありだと思う!今回イベントを企画して感じたのは、地域の人と接する機会が多かったから、そこでつながることができたし信頼関係も生まれたこと。そこで信頼関係ができて、IVUSAがクラブで他に何かしようってなった時に「この前楽しかったからまた行ってみようかな」って協力してもらえるような関係になると嬉しいよね。


―なかなかそれを実行するのって難しいけれどね…。

 難しかったからこそめっちゃ感じるのは、自分たちで全然主催しようとしないじゃんってことなんだよね。クラブってその地域課題の解決のためっていう側面もあるじゃん。社会福祉協議会とかボランティアセンターとのつながりも大事だし、他のボランティアに参加することも大事。でも、実際に課題を解決する地域の人たちとのつながりを持つことって、もっと大事なことだと思う。
 主催することによって、俺らが地域のために色々課題に取り組んでいる姿勢が伝わるというか。なんていえばいいんだろうか…。


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―なんとなく言いたいことはわかるよ。

 口下手でごめんね(笑)。IVUSAの人に関しても、せっかく研修*4でマネジメントを学んでいるのに活かし切れていないなっていうのは感じる。今回イベントを主催して感じたのが、「結構あの研修ってマジなんだな」っていう。
 例えば、リスクマネジメントをする時に許可が取れているか確認することってとても重要なんだ。集客のためにビラを掲示板に貼ったり配ってもらったりしたんだけど、それを行うのにも日野市の許可が必要で。許可を取るのにも内容に関して色々聞かれたり、回覧板回すにせよ、地区センターでイベントを開催するにせよ役所の許可が必要だったり。めっちゃ許可許可許可!って感じだった(笑)。自分が研修で教える立場として「許可大事だよ」「許可とってる?」って言っていたけど、本当に必要なんだなって感じたね。


―それも主催してみないと分からなかったことだよね。

 確かにそうだね(笑)。主催するからにはリスクマネジメントの考え方は大切だし、それを実際初めて使った(笑)。
 あとは、「人」ってめちゃくちゃ大事だなって感じるのね。最初は「こういうイベントがしたい」っていう漠然とした枠組みしかできていなくて。俺一人だけだったらできなかったことでも、先輩、同期や周りのみんなが色々アイデアくれたり、地域協働課や社会協議会の方とつながれたのも先輩に紹介してもらった経緯もあったしね。俺らだけで考えていたら全然進まなかったと思う。そのおかげで、スムーズに色々な話も進んでいったし内容も濃くなっていったね。


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写真(上下):イベント当日の様子。素敵な笑顔です。


―この経験を経て、次のイベントでは日野クラブとしてどういう理想を掲げていくの?

 フェアトレードのイベントは俺がやりたいって言って勝手に作ったものだから、完全に俺の頭の中のやりたいことなんだよね。だから、日野クラブというよりも俺がやりたいことなの。その他にもやりたいことがあって。言ってもいい(笑)?


―どうぞどうぞ(笑)。

 今回は実施できたことが一番の目標だったからすごく満足しているけど、イベントに手いっぱいでクラブ員がフェアトレードに関する他のボランティアに参加できるような機会を設けられなかったのが残念…。フェアトレードを知れるいい機会だしね。
 主催に関するノウハウは今年でできたから、次はもっと内容を詰めて反省点を改善すれば規模も大きくできるかもしれない。今回よりももっと来てほしいなって純粋に思うし。もうひとつ言えば、地域のフェアトレードのカフェとコラボしたいなって個人的にめちゃくちゃ思う。


―へぇ~!!フェアトレードのカフェが日野にあるんだ!コラボとか面白そうだね!

 そうなんだよね!何にも決まってない確証もない話なんだけど、そういうカフェと色々企画して商品とか一緒に開発できたら楽しそうだなって。そのカフェで実際に「IVUSA東京日野クラブの皆さんと一緒に考えた商品です」って売ってもらったらさ、来てくれた人にIVUSAで取り組んでいることも知ってもらえるし、純粋にめっちゃ良いなって(笑)。


―何かおしゃれだし、そういう風なことができたら夢が膨らむね!最終的に何年後かわかないけど日野市をフェアトレードタウンにしていきたいっていう野望もあったりしますか?

 最初はめっちゃ思ってた。勝手にフェアトレードタウン化計画とか考えていたもん(笑)。ただ、あれは委員会を立ち上げなきゃいけないし実際に何年もかけてって話だから。でも、学生から始まったらすごいなとはめちゃくちゃ思う。
 正直、フェアトレードにこだわっているわけではないんだけどね。たまたまやりたいと思ったのがフェアトレードで普通に楽しそうだなって思ってやっているだけ。はたから見たらフェアトレードおじさんみたいになっているけど(笑)。純粋に自分が楽しそうだなって思うことをやっているだけ。でもそれが一番楽しいかな。日野クラブとしては、同じ地域事業の市民フェア*5ってところで、一緒に考えた商品を販売できたらめっちゃいいなと思うしそんな感じですね。


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写真:参加した日野クラブのみなさん。


―夢に溢れている感じがしていいなぁ。あと、最後の質問になるんだけど、あなたにとってIVUSAとは何ですか?

なんも考えていなかった(笑)。



~30分後~



―改めてお聞きしますが、あなたにとってIVUSAとは(笑)?

はい(笑)。何かかしこまるんだけど(笑)。


―急に固くなった(笑)。

 一言でいうと『きっかけを与えてくれる場』
 IVUSAはきっかけ与えてくれるだけ。それを使うか使わないかは自分次第だなって。でもどっちが正解とかないと思うんだよね。
 フェアトレードのイベントをしようって言った時、先輩から色んな意見をもらって良かったなってめちゃくちゃ思うことはあったし、取り入れておけば良かったなって逆に後悔することもあった。
 あとは、プロジェクトでも色々な経験をさせてもらったのも、IVUSAっていろんなものが転がっているからだと思う。入ってなかったら絶対にできなかったことも挑戦させてくれるしね。その上でIVUSA入って、そういうきっかけを与えてくれる人に出会えたことが一番良かったって感じるし。そのきっかけを掴んで良かったなってめちゃくちゃ思う。


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『きっかけを与えてくれる場』


インタビュー・編集:髙橋諒(神奈川大学3年)
カメラ:三井明花(跡見学園女子大学2年)

~編集後記~
 フェアトレード問題はコーヒーやチョコだけじゃなく、身近にある色んな食品でも言えます。例えばカップヌードルに入ってる小エビ。それ以外でも僕ら日本人は一生懸命にエビを食べていますよね。実は日本は世界No. 1のエビ輸入大国のようです。そんな僕らのお腹を満たすためエビたちは、養殖のためにマングローブ林が破壊されてること、エビを獲るために大量の魚を捨ててること、ものすごい石油燃料を消費すること…色々な問題(特に環境破壊)の上で食卓に並びます。
 でも、そんな現状を消費者は知る機会はめっちゃ少ない。今回も「生産者」というワードが出てきましたが、180度改善することはできないけれど、僕らはやっぱり意識したり知っておく必要があるのかなと思いました。『エビと日本人(岩波新書)を読んでみて』(髙橋)

*1:地域事業…各クラブで実施される地域に根差したボランティア活動のことです

*2:※フェアトレード…直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。(フェアトレードジャパンHPより)』www.fairtrade-jp.org

*3:※フェアトレードタウン…行政、企業、市民団体などが一体となり、まちぐるみでフェアトレードの輪を広めようと取り組んでいる自治体をフェアトレードタウンといいます。フェアトレード産品の普及や、イベント、学習を通して市民の国際理解を深めます。フェアトレードタウンの運動は2000年にイギリスで誕生して以来、世界27ヵ国に広がり、1800以上の都市が宣言をしています(2017(平成29)年4月現在)。(逗子市HPより)www.city.zushi.kanagawa.jp

*4:マネジメント研修…事業を実施する際に必要となる考え方や、人・物・金・情報といった要素をどのようにマネジメントしていくかを学び、チームで仕事をする際に必要となるマネジメント能力を養うivusa独自の研修です。

*5:東京日野クラブの地域事業「市民フェア」については、以前ご紹介した小川奈央さん(日野クラブ)の記事をご参照ください。ivusatimes.hymmc.xyz