第137回のIVUSA TIMESは、群馬高崎クラブ4年生の和氣樹さんです!IVUSAの活動の一環として「遺骨収集」という活動がありますが、樹さんはこれまでどのような思いでその活動に取り組んできたのか、また、戦争と向き合ってきた中で感じたことなどを、素直に語っていただきました。ぜひ一読ください!
今回のメニューは、
の4本です。お楽しみに!
―自己紹介をお願いします。
群馬高崎クラブ4年の和氣樹と言います。よろしくお願いします。
―同じく群馬高崎クラブ4年の福光さくらです。よろしくお願いします!
1.沖縄隊の一員に加わった理由
―早速ですが、IVUSAに入った理由を聞かせてください。
昔から国際協力のボランティアがしたいなと思っていたときに、大学のオープンキャンパスで配られていたパンフレットにIVUSAのものがあって、それを見てIVUSAに入ることを決めました。
―なぜ国際協力のボランティアがしたかったの?
国際協力に興味があったからです。使わなくなった洋服を発展途上国に送るなどといった、国際的な活動に家族が協力的で、そういうものに触れる機会が多かったので、興味が沸きました。
―国際協力が身近にあったんだね。そのような思いのままIVUSAに入り、実際にどんな活動をやってきたの?
沖縄県戦没者遺骨収集活動、通称「沖縄隊」っていう、先の大戦(第二次世界大戦)で戦地となった沖縄県で、亡くなった戦没者の方々のご遺骨を収集し、ご遺族の元へお返しする活動をしてきました。
―たしか、沖縄隊って国際協力ではないはず…(笑)。
そうなんだよ(笑)。国際協力がやりたくて入ったのに、私全然やってなくて。沖縄隊しかやってないです。
―この活動に参加しようと思った理由はなんですか?
新歓で「沖縄隊」という名前を聞いた時に、単純に何をやるんだろうって興味が沸いたので参加しました。
ー興味の赴くままにだね。初めて参加した時はどんな印象だった?
重い。その一言で表していいか分からないくらいに、内容的にも、気持ち的にも重かった。ものすごい活動に参加してしまったかもしれないと思った。得られる情報量と、五感で感じる内容が多すぎて整理しきれなくて、複雑な気持ちになりました。
―正直大変そうだなって思っちゃった。
たしかに大変そうに見えるかもね。遺骨収集する現場ってすごい過酷で、岩を登り降りしたり、地面に這いつくばったり、みんな泥だらけになりながらやるからすごく大変なことも多いです。それよりも個人的に大変だなって思ったことは、感じたことを形にする作業かな。沖縄隊では遺骨収集や平和学習を通して、自分で見たり聞いたりしたことをしっかり落とし込んで考えることを大事にしているの。そこで、感じたことを綺麗な形にして落とし込むという作業があるんだけど、不器用な私にとってはそれが結構大変だったなという印象です。
ー感じたものを言葉にしていく工程で何か意識していたことはある?
私は落とし込む時に、少しでも取りこぼしがあるのは許せなくて(笑)。相手になんとか伝えたいという一心で、ちょっとのニュアンスでも頑張って伝えるようにしていました。
―その気持ちこそが相手に伝わっていると思うよ。大変といえども、次回も参加しよう!って思ったんだね。
そう思った!向き合いたいって思ったし、今の私にできることだって気づけたからかな。
―今の私にできること、ね。
IVUSAに入ったからこそ遺骨収集に出会えたし、そこでいろんなことを感じて、遺骨収集の必要性や重要性を知ることができた今の私にこそ、できることだって思った。
―沖縄隊の活動には今まで何回参加してきたんだっけ?
5回かな。沖縄隊以外にも政府派遣とかもさせてもらっているから、収集活動自体はもっと経験あるね。
―政府派遣っていうものもあるんだ。
国が行っている遺骨収集事業で、日本戦没者遺骨収集推進協会っていう社団法人が先導する派遣に、私たちIVUSA学生も枠を頂いて、参加させて頂いています。
―何回やっても遺骨収集というのは慣れたりしない?
慣れか。あんまり考えたことなかったけど、慣れはしないかな。毎回感じることも違うし。
―毎回新しいんだ。
でも私は言語化が下手くそだから、なかなか思うように人に伝えられなくて、伝えたとしても伝え足りないなって思っちゃう。上の部分だけを取って伝えた感が出ちゃって、毎回悔しい気持ちになる。伝えきれない。
2.戦争に対する視点の変化
―今までの遺骨収集の中で、印象深かった瞬間ってある?
くっきりとした人の生活の跡を見つけたときだね。歯ブラシとか、銃弾の跡があるやかんとか、名前の入っている万年筆とか。
―銃弾の跡…。
戦争って、私達のような“若い人”でくくられる人たちにとっては、単なる歴史の教科書での出来事になりがちじゃん。けど、それがはっきりと自分の中の経験に変わった瞬間だった。ガマ口財布とかもあって、お金に付着した土を払い取ると、一銭、十銭とか、“日本”とか書いてあるの。そういうものに触れると、こんな崖みたいなところに人が住んでいて、このお金で生活していたんだ、というように当時の様子が思い浮かんできて、いわゆる歴史、過去だったものが自分の中にストンと落ちてきた。
―過去のことが経験に変わるって、すごい。
ご遺骨もそうだけどね。でもなんだろう、生活用品とかの身近なものを直に見たとき、すごくリアルだなって思う。
―個人的に気になったんだけど、ご遺骨や生活用品ってどういう流れで見つかるの?
主に政府派遣の話になるけど、情報提供者の方からの情報をもとに、実際に現場に行って、辺りを調べるとお迎えできることが多いです。お迎えしたものによって、その場所がどういう場所だったかが大体予想できるんだよ。鏡とか、歯ブラシとか、整髪料の小さい丸型ケースとかの生活系のものがいっぱい出てくる場所は住民の方が隠れていた場所なのかなとか。銃弾や手榴弾が出てくるような場所は兵士の方が身を潜めていた場所なのかなとか。
―生々しいね。
そうそうほんとに。ただの歴史の出来事だと思っていたものが、自分の人生に経験として落とし込まれていく感覚がある。
―沖縄隊を通して、戦争に対してはどんな印象になった?
戦争は78年前に終戦したことになってるけど、終わっていないかもって思うようになった。少なくとも、今も土に埋まっていらっしゃる、私たちが収集できていない戦没者の方にとって、その帰りを今でも待っているご遺族の方々にとってはまだ終わっていない。沖縄に行って毎回思うのは...、とっても良いところなんですよ!海は綺麗で、 すごい賑わっていて、島唄が聴こえてきて、そんな雰囲気がすごくいいなって思う。けど、 ちょっと目を逸らすと米軍基地があったり、英語の看板があったり、軍人服を着た外国人が乗っている外車が走っていたりする。戦争の跡がすぐ傍にある。そういうのを見ると、「実はまだ戦争って終わっていないんじゃないか」「私たちも当事者なんじゃないか」ってすごい思う。これはたぶん、沖縄の遺骨収集を経験していなければ、私が沖縄に行っても「戦争あったんでしょ」くらいにしか思わなかったと思う。けど、沖縄隊を経験してからそう いうのが目に付くようになって、跡がいっぱいあることに気づいた。
―新たな視点で沖縄や戦争を見るようになったんだね。
3.今の私たちと沖縄隊
―私も戦争について学校で教わったけれど、やっぱり歴史上の出来事として片づけてしまっていた部分は正直あると思う。そして、私と同じような人も少なからずいると思うんです。そういう人たちに対して何か思うことはありますか?
当たり前のように平和で、やりたいと思ったことができて、行きたいと思ったところに行け る。何不自由なく平和を享受しているからどうしても忘れがちだけど、明日も同じように過 ごせるかどうかの保障はないなと思っていて。例えば、急に北朝鮮からミサイルが落ちてくるかもしれない。ロシアとウクライナの戦争に参加させられるかもしれない。急に他国から攻撃を受けるかもしれない。もしかしたら明日、私たちがきのこ雲の下にいるかもしれない。当たり前のように明日が来るって保障はどこにもないからそこ、今を、自分にできることを大切にしようよって思います。
―本当にそうだね。
戦争はもう起こらないって思っている人も中にはいるかもしれないけど、憲法改正しようとしていたり、海外から武器を買っていたりと、意外と日本が戦争をできる国になりつつあると思っていて。戦争は自国を守るための行為でもあるし、一概に否定をするわけではないけれど、自分が当たり前に享受しているものが急に無くなっちゃう。もしかしたらそういう日が来るかもよって思う。
―今の日常が当たり前ではないっていうことを日頃から感じて生きていきたいね。きっとそうすることで、本当に今すべきことは何なのか、本当に大切なものは何か、みたいなことに気付けるんじゃないかなと思う。
そうだね。そう感じることができたので、私はあの時沖縄隊に飛び込むっていう選択をした自分にすごく感謝したい。いつも他人のことや秩序を気にして、なかなか自分からガッて行くことが少なかった私にとって、あの時の選択は間違えていなくて、本当にやってよかったことだったんだなと思える。それがすごく嬉しいし、今こうやって沖縄隊に深く関われていることを誇りに思います。
―すごく素敵です。今年の夏も沖縄隊に参加されるということですが、どんな役割をされるんですか?
アドミニストレーションマネージャーを務めさせていただいております。
―沖縄隊でのアドミニストレーションマネージャーは、どのような立ち回りをするんですか?
沖縄隊だからといって特別なことは特にないけど、主にヒト・モノ・カネの管理だね。事務的な作業が多い役職なので、プロジェクトマネージャーなどの他の役職みたいに表立って何かしらやるということは少ない役職にはなります。
―縁の下の力持ち的存在ということだね。今回の夏プロでの目標はありますか?
私みたいに、沖縄隊に関われてよかった、参加してよかったって思える人を少しでも増やすことが目標です。
―この記事を読む人の中には、これから沖縄隊に参加する人、もしくは興味があるという人もいるかと思います。そんな方々に向けて沖縄隊の魅力を伝えてほしいです!
遺骨収集や平和学習を通して、「戦争」と「平和」に向き合うのはもちろん、「過去」、「今」、 これから先の「未来」、戦没者の方々やそのご遺族などの「人」、そして一緒に参加する仲間と正面からぶ つかって向き合い、いっぱい考えて、いっぱい感じて...ということができる活動になっています。もちろん沖縄隊以外の活動で学べることや得られるもの、大変なこともたくさんあるだろうけど、沖縄隊は特に、すごく感じられるものがいっぱいあるんじゃないかと思う。重みがあるというか。もちろん、楽しい瞬間も沢山あります。笑顔が絶えないとても温かい隊です。
―「重み」か。
決してネガティブな意味ではないんだよ。かと言って簡単に片付けられるものではないんじゃないかと思う。
―人間の本質的な部分に迫る活動だからこそ、言葉にしづらい部分があるのかな。
うん、そうだね。参加して感じてほしいな、この重さ。
―参加者にしか感じ得ないことだね。
他にも、歴史の教科書で知る内容以上のことを学べるし、今の自分に何ができるのかなって考えられるし、戦争は終わっていないんじゃないかって実感するようになるし。現地に実際に足を運ぶからこそ感じられることやそこから考えられることもたくさんあります。目で見て、肌で感じて、匂って、聞いて...情報量が多いからかもだけど、 言語化しきれない雰囲気がある。気になる方は沖縄隊に是非参加してみてください!
沖縄隊の集合写真
4.あなたにとってIVUSAとは
―では最後の質問です。あなたにとってのIVUSAとは何ですか!
「本当の自分に出会える場所」です。
―詳しく聞かせてください。
IVUSAに入って、沖縄隊含め色々な活動をしていく中に、例えば自分ってこういう作業が好きなんだな。とか、人見知りだと思っていたけどけっこう人とお喋りするのが好きなんだな。とか。自分って実はこういう感じなんだ!って思うことが多くて。IVUSAに入ったおかげで、今まで自分として約20年生きていても知らなかった本当の自分を知ることができました。
思いを語る樹さん
―ありがとうございます。最後に読者に向けてメッセージをお願いします!
私みたいにちょっとでも興味があったり、惹かれたりするものがあったら、迷わず飛び込んでみてほしいなって思います。さっき、いつ明日が奪われちゃうか分からないという話をしたけど、やらないで後悔するよりやって後悔した方がかっこいいです。
―いつ何が起きて、やりたいことが出来なくなるか分からないもんね。
私はあの時飛び込んですごく良かった。飛び込んでいなければIVUSAもやめていたんじゃないかってくらい、私にとって沖縄隊や遺骨収集活動は本当に大きな存在です。自分の居場所なのかもしれない。今の自分の軸というか、すごく大事なものです。
―思い立ったら迷わず飛び込みたいと、色んな意味で思わせられました。では、本日は以上になります。ありがとうございました!
喋って分かることっていっぱいあるんだね。自分ってこう思ってたんだ、とかが分かった気がする。ありがとうございました!
「本当の自分に出会える場所」を沖縄隊で見出し、まっすぐな信念で語る樹ちゃんの姿は今でも忘れられません。思えば、戦争について考えたのは随分と前のように思います。今回の取材で、戦争を語り継ぐことの大切さを改めて気づかせて頂きました。大変貴重なお話の機会をありがとうございました!
編集:福光さくら