IVUSA TIMES

日本最大級のボランティア学生団体IVUSAの素顔が読めるWEBマガジン

「自分の弱さを知れる大切な場所」勝又栄政さん

インタビュー第24弾は第7次カンボジア学校建設活動、リーダーの勝又栄政さん。

勝又さんの真摯な姿に注目です。

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-  今日はよろしくお願いします。簡単に自己紹介を!

 東京白山クラブ、東洋大学3年の勝又栄政といいます。クラブでは役員を務めせていただいています。よろしくお願いします。


-  IVUSAに入ったきっかけってある?


 ボランティアをしたかったのが1つです。僕、地元の大学を卒業してから東洋大学に編入学で入っていて。前の学校ではサークルとかそんなにできなかったから、今度はボランティアしたいと思い、目を付けていました。まあ団体名にボランティアって付いていたのが大きいかな(笑)。


-  そうなんだ!IVUSAでは、どんな活動をしてきたの?

 初めてのプロジェクトでカンボジア、その後フィリピンに行きました。それから越後関川雪まつりでサブリーダーを、今回のカンボジアではリーダーをやらせていただきました。


-  国際協力の分野が多いですね。海外に興味があるの?

 いや、海外はすごく嫌い。外国人怖いし英語も全然できないから苦手。でも、嫌なものを恐れて生きることの方が怖くて、それに怯えないように生きるには、それを好きにならないといけないと思った。だから海外ばっかり行っているかな。今は相変わらず英語は大っ嫌いだけど、昔ほど怖いような感覚は無くなりました。
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-  嫌なのを嫌なままにさせたくないってことですね。IVUSAに入るきっかけにもありましたが、なんで改めて大学に入ってボランティアをしたいと思ったの?

 人の役に立ちたかったからからかな。僕、性同一性障がい者なんだ。元々美穂という名前の女の子で、20歳になるころまで周りにカミングアウトできずにいて。それでも男になる手術を受けるために、前の大学にいるときはアルバイトでお金を稼ぐことにずっと時間を割いていて。だから、4年間自分のことで精一杯で、人のために時間を割くことができない自分が悔しくてたまらなかったんだよね。手術を終えてから、今の大学では少し余裕があるから、初めて人のために時間を使おうって思えたからやりたいと思ったかな。


-  そうなんだ。人のために使える自分の時間があるって幸せなことだよね。
 
  うんそうだね。それはとても幸せなことだと実感しています。


-  カミングアウトすることとかは怖くなかった?

 怖かったよ。人と違うっていうのが嫌だなって思った。でも、今はこれが自分だからって思っているから。今はいろんな人に障がいについて知ってもらいたい方が大きいかな。
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  • 勝又くんは、今年の夏のカンボジア隊のリーダーを務めていた訳ですが、そのきっかけはなんですか?


 きっかけは、IVUSAが全国で定期的に行っている街頭募金の活動に力を入れていたから。実はその募金に関わるまでは去年のカンボジアの活動から戻ってから少しもカンボジアに戻ろうとは思っていなくて。


- なんでカンボジアには戻らないって思ったの?

 海外がやっぱり嫌いだったし怖かったんだよね。英語もできないし辛かったし。だから別に無理して戻らなくてもいいかなって思ったの。去年の隊は資金不足で、学校建設はできなかったんだよね。だから先輩たちは今年の隊では学校建設ができるように、お金を集めないとダメだよって言っていたけど、、、。


- あ、資金不足だったんだ。それで今年の隊に向けて募金活動が始まったんだね。

 そう。だけど、自分は今年のカンボジア隊に行く気がなかったから、やりたい人がやればいいって考えていた。でも、自分が性同一性障がいをもって生まれて、それに対して関心がない人が嫌だったのに、実際に去年カンボジアに行って、「興味ないから今年はやらない」っていうのは、僕が生きていて人にされて嫌って思っていた事と全く同じことを自分はしていたんだなって思ったの。それから関係ないからやらないのではなくて、関わった以上はなにか興味をもって返さないとって思って。


- それで勝又くんも募金活動を始めたんだね。募金活動はどんな風に行われていたの?

 主に街頭募金。去年の12月から半年間で新宿・横浜・八王子・高崎・京都で延べ100回以上やってきました。京都は自分で通って、春にまた立ち上げたんだけどね。
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  • 通ったの?!


 うん。少し前はやっていたらしいんだけど、今は誰もやる人がいなくて、募金を進めていくチームもあまり機能していなかったから、自分が行ってカンボジアに興味ある人を探しました。それで見つけた2人に手伝ってもらって、徐々に人数も増やしながら募金をしていましたよ。


- へぇー!!すごい!!徐々に広めていって、お金も集めて、活動もできるようになったんだ。

 そうそう。それをやっている中で、いろんな繋がりができてきたんだよね。だけど、それを無駄にするような人が上に立つのが嫌だなって思って、じゃあ自分が今年のカンボジア隊のリーダーをしようかなと思った。

  • なるほどね。自分で広げていった繋がりを武器に、リーダーになったんだね!カンボジア隊ってどんなことをしてきたの?


 現地にいる期間が11日間で、その中でメインはもちろん学校建設だけど、他にも現地の子どもたちや、通訳として各班についた日本語を学ぶカンボジアの学生と交流したよ。最後空港で別れるときどの班も別れを惜しんで泣いていたから、彼らとはいい関係を築けたのかなって思います(笑)。

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  • 外から見る日本とか、カンボジアの事も知れて勉強になりそう!メインの学校建設は一から建てていくの?


 いや、大工さんの指導の元、コンクリートを作って、それを塗る左官という作業をするかな。それから整えてペンキを塗るって感じ。学校が建つまでのムービーがあるから、それを見てもらえればなんとなくわかると思う。
 

www.youtube.com


 実は元々現地に行く前から建設が活動期間中に終わらないって言われていたんだよね。今回の隊は2年ぶりの学校建設だったから、建設の経験者が隊にたった1人しかいなくて。しかも初めてIVUSAのプロジェクトに参加する人もいたから。


- 学校自体を建てる期間はどのぐらいだったの?

 5日間!そのあとに大臣とか村人が200人くらい来てくださる開校式があるから、日程がずらせなくて。左官に苦戦して全然作業が捗らなかった2日目に、大工さんには「完成できないだろうから、外壁だけでも完成させてほしい」と言われるほどでした。だけどその後みんながすごく集中してくれて、最後には期間中に全ての作業を終わらせました。
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  • えー!すごい。5日で建つんだね!そんな今回の隊にはどんなコンセプトがあったの?


 建設とは言ってもすべての工程を行うわけではないからね。今回は「想いはカタチに」というコンセプトを掲げていました。想っていても何もしないのは想っていないのと同じ。優しくしたいとか助けたいって思うなら、何か考えて行動をしなければいけないと伝えていました。これ今回隊グッズとして作ったんだ。

  • カンバッチ?


 うん。みんなにはまず自分のできることでいいから、とにかく表現してもらいたいなって思いました。それぞれが考えて表現したものには、ひとつひとつに色があってどれも素敵な色をしている。だからどの色も大切にしたくて、虹色のカンバッチを作りました。

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- その考え方が素敵だね。カンボジアにはこれからどうなってほしい?

 そうだな。自分がやりたいって思ったことを選択できる社会になってほしい。

  • うんうん。日本は恵まれているって思うよね。


 自分たち日本人は選択肢を知っていて、選ぶのに苦労する。でもカンボジアの子どもたちはその選択肢さえ知らない。カンボジアの子どもたちの中には物乞いをして生活をしている人もいるのだけど、話しかける人によって言葉を変えられるっていうことに衝撃を受けたかな。自分たちに「お兄さんお兄さん、これ買ってください」って日本語で言ってくるんだけど、英語圏の人には英語で話しかけてもいるんだ。学校で習うわけでもないのに。カンボジアの人たちは生きるために言語を学んでいる。これが本当の学びなんだなって実感したかな。もっと日本人もそういうところを学んでいかないとならないって思ったし、そういったことをしなければカンボジアのこども達は生きていけないことが悲しいとも思った。

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  • 2回目のカンボジア隊をリーダーとして終えた勝又くんですが、今後はどうカンボジアの事を考えていきますか?


 んー。またカンボジアに行きたいとは今は何故か思わないんだよね(笑)。カンボジアには本当に良くなってほしいって思うし、教育支援もしたいと思う。だから「行く」よりも、そこに対してアプローチをしたいっていう人を増やす方が今はあっているかなって。楽しかったから行きたいとはまた違う気がする。でも現地のためになることが「行く」ことであればまた行くという選択はするけど。

  • なるほど。「行く」ことだけが全てではないですもんね。記事を読んでいる隊員にメッセージをお願いします。


 カンボジアに限らず、色々なことに「自分は関係ない」と思わず、自分ごととしてみてやってほしいな。勉強会のときから言っていたけど、遠いから関係ないとか思わないで。一緒の時代をせっかく過ごしているんだから、ぜひ関心を持ってカンボジアにも、いろんな人にも接してみてほしいかな。
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- 大学では勝又くんは何を学んでるの?
 
 国語の先生になりたくて教職もとっているよ。


- なんでなりたいって思ったの?

 自分が中学のとき一番辛かったからかな。当時は友達に仲間はずれにされたくないから自分の障がいのことを隠したりしていてすごく辛かったんだ。この歳の時に周りの大人からもらう一言って他の年代の時と全く違うんだろうし、人の根本とかアイデンティティーとなるところに対してアプローチできたらいいなって今は感じている。だから中学校の先生になりたいんだ。


-  自分の経験も踏まえてなのね。教職もとりつつIVUSAでは役員もやっているでしょ?大変じゃない?

 んーまぁ大変(笑)休日もあまり休んでないかな(笑)編入で学校に入学したこともあるし、それは自分が至らないところが多いからってだけだけどね。
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  • 趣味は何かある?


 一人暮らしっていうのもあって料理とか、あとは公園に行くことかな。空眺めているのがすごく好きで、家の近くの公園が最高なんだよね。上野公園も好き。公園の近くの美術館も好きでよく行くかな。美術館いって、公園いって、ビールのんでまったり過ごす。これが超幸せだよ。

  • 大人な休日ですね(笑)では、最後の質問になりますが、勝又くんにとってIVUSAとは?


 自分の弱さを知れる大切の場所かな。他のゆるいところにいると、つい甘えていても注意してくれる人はいないけど、IVUSAでは怒られたり批判されることももちろんある。その時に頑張れていない、弱い自分に出会えることができるから、それが素晴らしいなって。自分が弱くてダメだからこそ、周りにあるちょっとの優しさに感動したり、怒ってくれるこの人がいてよかったなって感謝できるし、幸せだなって思えるから。
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- 考えさせられる…。私もすごい逃げグセあるから。でも、それにちゃんと向き合えているのはすごいなって思います。ありがとうございました。

インタビュアー:川島宏美(日本大学3年)
カメラ、編集:山田充(日本大学2年)

【編集後記】
今回は内容が盛りだくさんで、いつもより長い記事になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。「自分の弱さ」からついつい目を背けてしまいがちですが、それを受け止め、向き合う勝又くんの姿に感心しました。私も1度、知らず知らずに目を背けていることを再認識して、それに向き合ってみようかな。