IVUSA TIMES

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第109回「通過点」三浦慎爾さん

第109回のIVUSATIMESは、27期東日本運営本部で運営本部長を務めていた東京多摩クラブ4年の三浦慎爾さんです。三浦さんは今回が初めての活動となる、天竜川鵞流峡復活プロジェクトのプロジェクトマネージャー*1もされていらっしゃいます!今回は三浦さんが懸けるプロジェクトに対する想いと、学生幹部を振り返り今後のIVUSAへの考えを語っていただきました。

今回のメニューは、
1. 天竜川鵞流峡復活プロジェクトとIVUSA
2. 活動の可能性
3. 東日本運営本部長の経験
4. IVUSAは「通過点」

となっております!



1. 天竜川鵞流峡復活プロジェクトとIVUSA

―まず自己紹介お願いします。

東京多摩クラブ法政大学4年三浦慎爾です。東日本運営本部で運営本部長をしていて、今年の春は天竜川鵞流峡復活プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務めます。


―よろしくお願いします。まずは天竜川鵞流峡復活プロジェクト*2についてお伺いします!このプロジェクトはなぜ始まったのですか?

今回活動する長野県飯田市の天竜川鵞流峡エリアでは観光業として天竜舟下りをやっているんだけど、舟が通る川沿いの竹林が段々と繁茂してきて。その状態がひどくなっていったから、天竜舟下りをやっている船頭さんが有志で竹を刈ろうというのが出発点。

何で竹林の整備が必要かというと、景観の悪化と他の植物の成長を妨げてしまうことはもちろんだけど、竹は根が浅くて地面いっぱいに広がるから大雨や地震で土砂崩れなどのリスクが大きくなってしまったり、陽が入らなくなって薄暗くなってしまったりするのね。そこって人も立ち入らないから不法投棄のゴミがいっぱい増えてきちゃって。対策として立て看板が設置されているんだけど効果は薄いよね。


―なるほど、いろんな問題点があると。舟下りの船頭さんが活動し始めたことで地域にも輪が広がっていったということはありますか?

船頭さんからはじまり、竜丘地域の自治会の人や地元の中学生、一般の方々が協力して天竜川鵞流峡復活プロジェクトが2015年に本格的に始まっているよ。プロジェクトが始まっていざ竹を刈ってみると「この刈った竹はどうする?多すぎて処理できんくね?」という問題点が見えてきて。そこで元々の船頭のルーツが「いかだ」だったから、刈った竹でいかだのアクティビティを実施したり、このいかだの竹を燃料にするために地域の事業者と連携する取り組みを始めたり。


―燃料ですか!?

そう!竹は燃料にもなるんだよ。そういった特長的な取り組みをしてるからけっこうメディアにも取り上げられて、世間にも注目されてきているね。この竹いかだは夏にやってるから、今回の活動では出来ないんだけどね(笑)。


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写真:刈った竹でいかだを楽しむ様子です。スリルがあってとても楽しそう!(笑)


―竹いかだ体験したかったですね。その他にもどのような取り組みがありますか?

竹筒でご飯を炊いたり国産メンマを作ろうとしたり。食を通じて竹林整備を推進していく意味でも力を入れているんだ。さらに新しく竹灯籠を企画しています。そういった取り組みを続けることで天竜川が蘇ったというか、どんどん奇麗になったから、地域の方から身近に天竜川があることを改めて認識できたって声をもらえて。


―それは嬉しいですね!だけど竹林整備の取り組みがこんなに成功しているのに、何でIVUSAが関わる必要があるんでしょうか。

そこなんだよ。その最大の理由はやっぱり人手不足。放置竹林問題は飯田市以外の地域でも広く問題になってるんだよね。今整備中の放置竹林はほんの一部で、これからはもっと広範囲に展開していく必要があって。さらには鵞流峡復活プロジェクトの方々も竹林の整備と利活用のノウハウを広めていきたいとのお考えもあって。だけど、みなさん社会人ですし当然ですが普段仕事があるからそこまで手が回らないのが現状です。そのプロジェクトメンバーにIVUSAのOBの方がいらっしゃって、その方からお話をいただいて活動実施に至りました。


―OBの方からお話をいただいたプロジェクトだったのですね!

IVUSAからは学生のマンパワーを提供して、鵞流峡復活プロジェクトからノウハウを頂き、将来的には放置竹林に広くアクションを起こしていくのが大きなグランドデザインとしてあるかな。こういった単なる支援者と被支援者の関係を超えた相互扶助の関係が最初の時点で成り立っているのはとても大きい。


2. 活動の可能性

―なぜ天竜川鵞流峡復活プロジェクトのプロジェクトマネージャーになったのですか?

もうすぐ卒業を迎える4年生として、後輩のために挑戦できる場を提供したかったのが第一。俺もこれまでIVUSAを通して成長できた部分があったので。次に天竜川鵞流峡プロジェクトの可能性に対して魅力を感じて。もちろんプロジェクトとして地域の課題解決を目標にしているけれど、このプロジェクトは飯田市の問題を解決するだけじゃなくて放置竹林全体を根本的に解決するために取り組んでいるんだよね。それが最初の大きなビジョンとしてあるから、この地域と課題自体の二つに対して取り組めるっていうのがけっこう魅力に思えた!


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写真:2月5日、6日に行われた勉強会の様子


―その魅力について少し教えてください!

一言で言えば一次隊かな。ずっと続いているプロジェクトだと過去に積み重ねてきた伝統や慣習があるかもしれないけど、今回はそういうところも自分たちで作っていくわけじゃん?そういう点で難しさも面白さもあるかな。なおかつどの学年も経験値は横一列だから、一人ひとりが主体的に動かないといけない環境は大事で。IVUSAがよく言う「遊び心と冒険心」を体現できる隊にできたら良いな。後はあれかな!活動場所まで舟でしか行けなくて(笑)。


―舟!歩いて行けないんですか??

そうそう、舟でしか行けないからちょっと特殊な感じではあるし作業場所もなかなか険しい場所かも。


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写真:天竜川鵞流峡復活プロジェクト様よりご提供。船頭さん方の活動の様子。


―けっこう急そうですね…

みんなが想像している以上にハードワークになりそう(笑)。そういう他のプロジェクトとはひと味違う面でも楽しめる活動なのかなっていうのはあるかな。最終日はちゃんと舟下りを楽しめるよ。


―すでに2日間乗っているのに最終日乗るんですね(笑)。

最後はちゃんとお客さんとしてね(笑)。せっかく活動に行くんだから楽しまないと!船頭の方々もIVUSAの学生達に飯田市を好きになってもらいたいっておっしゃってくださっていて、そのために舟下りを楽しんでくれれば良いんじゃないってことで、最終日は舟下りをする日程になってます。


―行ったら絶対魅力に取りつかれちゃう要素が満載ですね!


3. 東日本運営本部長の経験

ーここからは学生幹部役員についてお伺いしていきたいと思います。まず三浦さんが東日本運営幹部に立候補した理由は何ですか?

たくさん理由はある(笑)。一番は先輩たちの背中を見てきたから。自分たちの代が4年生になったときは、先輩たちのように上の立場になってIVUSAを支えていかなきゃいけないんだなっていう想いが強かったかな。

所属する多摩クラブがすごく誇りで。 1年生のとき、当時の学生代表が同じ多摩クラブの先輩*3で身近な存在だったし、クラブとは別に本部という存在があることも少しずつ認識していってた。それにどのプロジェクトに行っても幹部として多摩クラブの先輩が就いている状況でそれが当たり前みたいな環境で育ってきたから、学年が上がったらそういう役職を務める立場になるんだって思っていた。そんな先輩たちが俺たち後輩の挑戦の場をずっと作り続けてきてくれたから、その恩を同じように後輩にも返したいなと。そういう事情もあって、もう一個上のレベルでIVUSAに貢献することを考えて幹部役員に立候補しようと思って。


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―やっぱり先輩達の影響って大きいですよね。先輩達が頑張ってくれたから、受け継ぎたいって想いはとても分かります。今年1年間の幹部生活を振りかえり何が印象的ですか?

IVUSAも大きな学生組織で、なおかつ完璧な組織ではないから、毎年所属している会員に対して「IVUSAにいて良かった」って思ってもらうより良い状態をつくるために改革と改善を繰り返し取り組んでいて。今年行った新しい改革方策として、4月から6月は試行期間として本部
役員を組閣しないで、7月以降みんなが頑張れるように準備をしていこうとしたけれども…。


ーと言うと…。

やっぱね、本部とクラブとの間で密接な連携が取りきれず、結果的にクラブ運営層のみんなに苦しい思いをさせてしまったのが今年の大きな反省点としてあります。本部としてやりたいことがクラブ運営層のみんなのため、延いては会員全体のためになると思っていたけれども、この改革自体が組織内で大きな変更を生んだから、クラブ運営層のみんながやりたいこととIVUSA全体の長期的な方針が合わなくてやりにくさを感じさせてしまって。


―改革は明確に正解があるものでもないので、とても難しいですよね。

まあ、ちょっとポジティブな言い方をすれば、このやり方じゃダメだったねって分かったことが成果だったのかなと。


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―ポジティブに捉えることは大切です。企業だったら今年の反省を来年に生かせることが出来ますが、学生幹部は1年しか任期がないのでそこが難しい点でもありますよね。

確かに(笑)。任期中はずっと大変だったけど、自分の中で「あらゆる事は自責で考えること」「いろんな判断を人のせいにしない」っていうのを大事にしていた!今年の改革も最終的には学生幹部内の話し合いの末に意志決定したんだよ。

だからこそ重い責任を持たなきゃいけないし、苦しいときも自分が決めたことだからって踏ん張れたのはあるなぁ。そのときに意志決定した自分が嘘だったって言いたくなくて。あの会議の場で合意をしたけど数ヶ月経ったタイミングでやっぱり違うって言ったら「じゃあ、あのときにイエスと言った俺は何だったの?」って。過去の自分を嘘つきにしないためにも今を頑張りたい思いでやってるっていうのはあるかな(笑)。


4. IVUSAは「通過点」

―最後にあなたにとってIVUSAとは?

『通過点』かな。

4年間続けてきて一人ひとりが心豊かに生きられる社会が実現してほしいなぁって思った。俺自身も心豊かな人生を送りたいし。じゃあ「心豊かに生きる」って何なのか。それはどれだけ社会と繋がりがあるか、もっと言えば自分とは異なる何かとどれだけ触れ合えるか、社会をどれだけ自分事として捉えられるかとということなんじゃないかな。

やっぱり人の心理ってさ、自分が知らない、関わったことのない未知なことには恐怖心を抱くし、できるだけ避けたいのが本音だと思うんだよね。でも、それを少しでも知っていたら自分の未知に対する考え方って変わってくるし知らないことによる偏見も無くなるだろうし。そういう意味とても大事なことだと思ってて、結果的に自分が見える世界を広げることに繋がるのかなって。IVUSAにもそれを培う土壌っていうのもあるんだよ。例えば、IVUSAっていろんな人がいるじゃない(笑)?



―めちゃめちゃいっぱいいます(笑)。

俺も4年間でいろんな人と出会ってきたわけで、初対面でこんな野郎とは絶対仲良くなれねえって人もいたし(笑)。でもさ、自分とは違った枠を持った人たちと関わると「この人ってこういう見方で考えるんだ」と参考になるときもあるんだよね。1年生の時はあまり知らなくて少し苦手意識を感じていた人と、結局仲良くなれて互いに尊敬し合えるところもあったし。

後はプロジェクトで言うと、自分にとって初めて行く地域にもなると初対面の方に会うことが圧倒的に多いじゃん。そこでカウンターパートさんと出会って価値観が広がるし、知らない地域のことが肌で感じられると思う。自分にとって新しい場所に行くことで、その地域自体が自分にとって関わりがある場所になるんだよ。そうなるとテレビで話題になると気になっちゃうじゃん?


―気になります!

そうなると対岸の火事じゃなくて、自分の認知している社会の中の出来事という認識になるから、自分事として捉えられるようになると思っていて。そういった意味でもIVUSAにはいろんなものに触れ合えるキッカケが沢山あるんだよ。

その一方で、今のIVUSAにはそれを充分に生かしきれていない面もあって。自分の経験したプロジェクトのことしか話せないというものざらにあると思うし、普段の組織運営で疲弊しちゃってIVUSAの組織自体が嫌になってしまうという学生もいるし。いろんな経験を積んで視野を広げて、心豊かに生きるための選択肢は数多くあるのにも関わらず活用しないのはもったいないと思う。


―IVUSAには自分が成長できるキッカケは沢山ありますもんね。

本当にそう思う。俺は来年からIVUSAの事務局員になって今後もIVUSAに関わり続けるんだけど、その立場になってからはIVUSAで世のため人のために頑張っている学生、頑張りたいって思っている学生が馬鹿をみるようではいけない。IVUSAの活動は世の中から賞賛されるべきことであるはずなのにその代償を学生自身が払っているのも、何かをするにあたって誰かがしわ寄せを食うのも、それは持続可能な組織ではないと思っているし。
いろんな選択肢があるIVUSAをフルに活用することで、心豊かに生きることにも繋がると思っているから、その選択肢に対して行動しやすい環境づくりをしていくこと、組織の中で学生に負担が集中している現状を変えていくことが今後やりたいこと、やらなきゃいけないことだと思ってるかな。まずは組織自体が持続可能であってほしいから、その実現のためにも自分自身もまだまだ貢献していきたいと思う。

あとは俺自身IVUSAに事務局として関わることを決めたけど、俺の目的はIVUSAにいることじゃなくて、一人ひとりが心豊かに生きていける社会を作るために何かしたい気持ちがあるから、そのためには必要ならば今後IVUSA外で何かするかもしれない。そういった意味でも今のこのIVUSAは俺にとっては『通過点』だね。
ここがゴールではなくて自分が目指すものに向けて行くための通過点という意味です(笑)。


―壮大ですね。今日は長い時間ありがとうございました!



編集後記:三井明花

天竜川鵞流峡復活プロジェクト自体は今回が初めてですが、すでに地域の方との関係が構築されている雰囲気が伝わってきました。船頭さん方とIVUSA学生が合わさったらどのようなアイデアが出るのか…とても楽しみです(笑) 活動応援しています!
インタビュー,編集:三井明花

*1:天竜川鵞流峡復活プロジェクトのリーダー

*2:天竜川鵞流峡復活プロジェクトHPです。天竜川鵞流峡の歴史やこれからの取り組みを見ることができます!garyukyo.org

*3:24期学生代表の砂田さんの記事です。 ivusatimes.hymmc.xyz