IVUSA TIMES

日本最大級のボランティア学生団体IVUSAの素顔が読めるWEBマガジン

第111回 「ご馳走」 髙橋諒さん

第111回のIVUSATIMESは、一昨年度までIVUSATIMES編集長を務められていた神奈川白楽クラブの髙橋諒さんです。今まで知らなかった編集長として得たもの失ったものとは?タイムズを続けた甲斐があったものや後輩に伝えたいこと、クラブに感じることなど多くのことを熱く語ってくださいました!タイムズが「ご馳走」たる理由が見えてきます。

今回のメニューは、
1.忘れられない取材
2.大切にしている紙の質感
3.得意を見つける方法論
4.IVUSAは「ご馳走」

の4本です。お楽しみに!



1. 忘れられない取材

ー最初に、タイムズに入ったきっかけについて教えてください!

最初は入ろうだなんて全く考えていませんでした(笑)。かろうじて存在を知っているだけ。そんな1年生の自分に声をかけてくださったのが、編集員をされていた同じクラブの先輩です。その先輩から熱心なお誘いを受けたのですが、当時は文を書くのも話すのも苦手で、そもそもIVUSAに深入りもしたくなくて、生意気だけど最初はお断りしてしまったんですよ。でもその気持ちが素直に嬉しかった。それで嫌だったらすぐ辞めればいいやっていう保険付きで始めてみようと思いました。今でもその先輩には感謝しきれませんね。


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写真:髙橋さんが2年生のときのタイムズ追いコン。タイムズの第一印象は「初めてのミーティングかお洒落な渋谷のカフェだったのに衝撃を受けた」こと。


―IVUSATIMESで得たものはありましたか?

強いて言えば、記事に対する責任感かな。元々強いタイプではあったんですけど、更に拍車をかけて強くなった部分があって。たくさんの人に読んでもらうために記事にして外に出す訳なので、中途半端なものは書きたくなかったんですよ。とういか書いてはいけない。だから時間をかけて何度も編集して、誰でも気持ちよく読んでもらえるような形で出すという意味での責任感は一番身についたかな。



―責任感ですか...なるほど。その責任感も含めてタイムズで得た経験や、身についたものが生かされた場面などあれば教えてください!

生かされた場面か。二年生のときに、当時印旛沼の*1プロジェクトマネージャーを務められていた佐藤良賢さんを取材させていただいたときかな。そのときの取材で思い切ったことをしてしまって。今の個人的な悩みを質問にして記事に付け加えてみようと(笑)。その悩みが「プロジェクトでやりがいを感じることができない。どうしたらいいのか」というものです。

もちろん各プロジェクトで出会った地域の方や同じ隊の学生と素晴らしい経験ができたことは本当に嬉しかったんだけど、プロジェクトの本質というか、目的を達成するという点でのやりがいを感じることができなくて。それってつまり皆が達成できて感動しているときにひとりだけ虚無な存在がいるっていう悲しいことだよね。それを改善したくて質問にして教えを乞おうとした。



ーそうしたらどうなりました…?

「それって多分、真剣にやってないからだよね」って言われたんだよね。「勉強会とかちゃんと言ってる?」「いや、行ってないです。二回あるうちの一回だけ行けばいいと思ってました」みたいな。「せっかく高いお金払って行ってるんだから、事前で一生懸命にやれば、当日も絶対自分の実力が思い切り出せるし、すごい良い経験になると思うから、一つでもいいから本気になってやってみて」と。これが自分の中で深く刺さりました。完璧な自分の甘えを指摘されたのが恥ずかしかったのもありますが、タイムズの取材ってこんな使い方もあるんだと知ったのが衝撃的でしたね。みんなの悩みを解決できるかもしれないという。

この言葉を意識して、二年生の*2春プロで西伊豆、東日本に一生懸命参加してみたらやっぱり返ってくるものも大きかった。そのときの同じ班のメンバーとは今でも繋がりが深いし良い経験になりました。



写真:西伊豆での写真。現在でも班LINEが動いているほど仲が良いとか。


―タイムズの後輩に伝えたいことや頑張ってもらいたいことは何ですか?

もうね、そりゃあ山ほどあるよ(笑)。去年まで編集長として膨大な記事を編集してきたから、編集技術にはそれなりに自信がついてしまった。だからこそ、今の皆が編集した記事を見ると「ちょっとこれでは…」っていうものが目につくかな。それと既成概念に囚われて取材する対象を決めるのに気をつけて欲しいなと。経験を積むうちに上手くなることや、今までの慣習を大事にすることには肯定的ですが、それが思考停止につながってしまう危険性もある。なぜ取材するのか、読んでもらうにはどうしたらいいのかといった理由をきちんと意識しないとなかなか上手くいかないと思う。


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写真:IVUSATIMESのミーティングの風景。「1年と始まりと終わりは大学やキャロットタワーで行ったりします。その他はカフェで行うことが多いですね」


ー3 年生の時に編集長をやられていたということなのですが、大変だったことや嬉しかったエピソードはありますか?

編集長の任期が終わったときは本当にスッキリしました。精神的には本当に大変。そもそもチームをまとめるのが苦手でしたから。今までも高校時代に初心者ながら剣道部の部長を務めたことがあって。「初心者の自分が口出ししても説得力がないだろう」と、自分が率先して物事に取り組む姿勢を示し続けないといけないとずっと意識していました。  

結果として、ひとりで全部を抱え込んでしまうといったマイナス面が目立ってしまって、タイムズの同期に不満をぶつけて孤独感が一層強まりました。誰も助けてくれないような感覚でしたし、実際誰も動こうとしてくれなかった。だから他のみんなより編集が得意になったのかもしれません(笑)。チームをまとめるは生涯をかけての課題かもしれませんね。そういう苦しいときが多かったけど、読者の方から「面白かった」っていう声や、取材させてもらった方から「ありがとう」の言葉をもらえたことだけが嬉しかった点でした。



ー大変な反面、終わった後の達成感もすごそうですね!

うん。すごい楽しかったよ。それは間違いありません。


ー確かに魅力的ですよね。魅力的なタイムズをもっと多くの人に知ってもらうためには何をすべきだと思いますか?

そうだね。IVUSA の特質として4年間で学生が総取っ替えになるから、タイムズの記事は卒業する人よりもこれから入ってくれる人に読んでもらわないと潰れてしまう。そのためにツイッターやインスタで宣伝はしてるけど、同じようなことをやっていても飽きちゃうから、日頃の些細なところからアイデアを探すことが必要かな。いいとものテレホンショッキングをタイムズ風にやろうとか新しい企画が実行されなくてもされても出し続けないと腐っちゃう気がする。そういう「いいな」を敏感にキャッチして取り入れていく姿勢が大事だと思う。
 


2.大切にしている紙の質感

―今の諒さんが思う新しいタイムズの要素はありますか?

やっぱり今の流行はYouTube だと思う。ていうかみんなそうでしょ?それを導入するのは時代の流れに沿った真っ当な考えじゃないかな。実は編集長のときに、広報部の方から「動画でやってみないか」と誘われたことがあったんです。



―そうなんですか!それは初耳です!

でも、動画って面倒くさそうじゃないですか(笑)。やり方も分からなかったし戸惑いもありました。それに議題が何か投げっぱなしな感じがして心の中では反発も正直ありました。私自身、そのころは今よりももっと器量が小さい人間で恥ずかしいことですが…。だからその時は断ったんです。今考えたら時代に乗り遅れる寸前だったのかな。



―後輩達には動画を勧めたいという思いはありますか?

使い方を工夫できるのであれば勧めたい。というのも軸がぶれてほしくはないんだよね。文字には文字の良さがあるからそれを忘れないでほしい。



―文字でしか伝えられない思いがあるよっていう感じですか?

いや、違う。動画と文章だとやっぱり質感に差がある気がする。動画じゃ伝わり切れないことが文章だと表現できるというか。確かに動画ってインパクトがあって印象に残りやすいし、見ていて疲れないところが魅力的だよね。文章だとどうしても読んでいてうんざりしちゃうから(笑)。例えば記事の予告に動画を使って引き付けるといったように使い分けることがこれから必要になってくるはず。

それでも、相手に実際に会って感じた細かな雰囲気を文字に染み込ませたり、伝えようとしている内容をくみ取って付け加えたりするのは文章のほうが向いていると思うんだ。いわば紙の質感なんだ。紙をめくって文字を読むみたいな。本屋さんに並んでいる本を選ぶときにパラパラとページをめくるようなさ。そういう面白さがタイムズをやっていて記事にはあると思うので捨てたくないっていう。要するに上手くやって欲しいです(笑)。



―はい(笑)。ちょっと分からなかったですが、タイムズへの熱い思いが今の諒さんから感じ取れたような気がしました。

これは胸張って熱くやったと勝手に思っているからね。



3.得意を見つける方法論

―大学でタイムズ以外に影響を受けたものはありましたか?

基本的に学校の授業ですね。専門の法学や政治学のほかにも様々な授業を受けるなかで一般教養の哲学とか地理学にも関心を持つようになったんですよ。授業終わった後に、先生と疑問に思ったことについて議論するようにもなって。そこで初めて出会うものへの素晴らしさや面白さを実感しました。なので、履修するときはシラバスとかを徹底的に読み込んで取る授業を決めていましたね。



ーそうなんですね!将来的に学んだことを仕事にしたいと思いますか?

仕事にするのはまた別な気がするな。林修先生が「好きよりも得意を仕事にした方がいい」 とおっしゃってたんですけど、その通りだなと思って。好きだけでは努力しても得意な人には追いつけないと思う。大切なことは自分の武器を理解して戦うことじゃないかな。もし、今は自分のやりたいこととかなりたいものがなくても、それは決して悪いことではなくて。逆にやりたいことがないって事はいろんなものに触れるチャンスでもあると思うんだよね。だから、いろんな価値観に触れてながら自分の武器を探すようにしています。



―では、諒さんは得意なことを IVUSA で見つけられたのか、それとも入る前から自分の得意なものが固まっていて、それが編集長をやったからこそ伸びたなとか、逆にこういう欠点とか得意ではないことものがあったけど IVUSA での経験で長所に変わったこととかありましたか?

あー、あります!得意なことって急に開花するなんてことは無いような気がするんだ。小さな頃から何かしら得意な分野ってあるはず。例えば走るのが好き、お絵かきが好き、テレビみるのが好きとか。それが自分の場合は絵が得意だったんだよね。



―そうなんですね!

親の影響とかもあると思うんですけど、小さな頃はクルマを描くことがすごく好きだった。それの延長線で図工や美術と姿を変えていって、そういう時間が一番幸せで、常にソワソワしていた(笑)。そういった得意なことって他にもいっぱいあると思うんだよね。自分の場合は絵を描くのが得意だし議論とかするのも好きだし。その中の共通点が...何かあるんだろうね(笑)。概念的な得意が大切な気がするようなしないような。



ー白楽クラブにはどんな想いがありますか?

特にないですね(笑)。まぁそれは半分冗談で、白楽って自由な感じというか、型にはまらない雰囲気が居心地が良かった。ガッツリIVUSAでもなく、みんな仲良いアットホームでもなく(笑)。


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写真:タイムズでは、毎年夏休みにインタビューも兼ねて関西のメンバーと交流しているそうです。「毎年お世話になっているゲストハウスに行くのが楽しみのひとつ」とのこと。


4.IVUSAは「ご馳走」

―それでは最後に、あなたにとって IVUSA とは?

僕にとって IVUSA(TMES)とは、ご馳走かなって思ってます。



―ご馳走、ですか?

そう。ご馳走。最近YouTubeで一流の有名料理人が特集されている動画をよく見るんですけど、その人たちのこだわりがすごくて。食材の産地まで出向いて、味とか香りを自分の目で見極めて決めたり、美味しく食べてもらうための下ごしらえにすごくこだわり抜いていたりするのが面白いんですよ。そこが自分にとってのタイムズに似ているなって思っていて。取材させていただいた学生の言葉をいかに調理して、その旨味を引き出すことができるか。文や写真の一つひとつにしても何も味付けをしないでそのまま出すと、読んでくれる人も不味いって感じるし取材された人もあんまり良い気分にはならないよね。自分達がご馳走を作るんだっていう気持ちでやれば細部までこだわれるし、記事を出したときの達成感もすごいと思う。そこが一番自分の中でいうご馳走かなって思いますね。それと同時に「芸術」とも言い換えることができると思っていて。自分の中にある目指したいものに向かって写真や言葉を磨いていく作業も、ご馳走とある意味表裏一体なのかな。



―深いですね。貴重なお話しありがとうございました!



編集後記:田村龍也

皆さん初めまして。新しく入りました、白楽クラブ2年の田村龍也です!今回が初めての取材、編集でした。なので皆さんが期待していた記事が書けたか分かりませんが、とても良い経験になりました。取材をして、諒さんの記事に対する責任感や物事の考え方など、見習うべきことがたくさんあると実感しました。諒さんの姿勢を見習い、今後もっと質の高い記事を書けるように頑張りますので皆さんどうか温かい目で見守ってください…!
インタビュー,編集:田村龍也(神奈川大2年)

 

*1:プロジェクトでのリーダーのこと

*2:春休みの期間に行うプロジェクトのこと