IVUSA TIMES

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第121回「飛行場」「当たり前の場所」松山実愛さん、松本大輔さん

第121回のIVUSATIMESは、東京市ヶ谷クラブの松山実愛さん、京都深草クラブの松本大輔さん、CMT*1インストラクターのお二人にインタビューしました。CMT研修は、松本さんや松山さんの他にも様々なインストラクターによって運営されていますが、そんなインストラクターの中から代表として取材に応じてくださった松本さんと松山さん。二人は、一体どんな思いでインストラクターを続けてきたのでしょうか。

今回のメニューは、
1.CMTインストラクターとは?
2.インストラクターになったきっかけは?
3.インストラクターの経験を通して成長できたことは?
4.インストラクターの魅力とは?
5.あなたにとってのIVUSAとは?

の5本です。お楽しみに!

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CMTインストラクターとは?

―伊藤:では、自己紹介からお願いします。


松山:お疲れ様です。関東CMTマネージャーチームのマネージャーを務めています、東京市ヶ谷クラブ四年の松山実愛です。本日はお時間いただきありがとうございます。

松本:関西のCMTインストラクター(以下イントラ)長、京都深草クラブ四年の松本大輔です。お願いします。


―伊藤:まず、普段だったらIVUSATIMESはこちらで取材する人を決めて、取材して記事にするという流れなのですが、今回は松本さんの方から是非CMTイントラをテーマに取材してほしいとのことで、どうして取材依頼をしてくださったのか理由を教えていただきたいです。


松本:恥ずかしいな…(笑)。自分から申し出た理由…今丁度イントラを募集している時期なんですよ。例年であれば対面の研修で、研修の終わりとかに誘ったりとかできるんですけど、今オンラインでやっているということでそれが難しいので、使えるものは全部使おうということで、IVUSATIMESに載せてもらえたら、多少来るのかなと思って、ダメもとで声を掛けたらいきなり取材していただけるということで、正直いまびっくりしているところです。


―伊藤:そうだったんですね。では、IVUSATIMESに載せてイントラになりたい人を募集するという感じですかね。


松山:そうですね。


―伊藤:IVUSATIMESがそのような貢献ができてうれしいです。
CMTインストラクターはどのようなものなのか具体的に教えていただきたいです。


松山:CMTインストラクターは研修やボランティア先、クラブのような現場で人材育成だったりだとか、リスクマネジメント、安全管理という所をチームとして担っています。このCMTインストラクターチームがどういったことをしていこうとしているのかについては、夢や何かに挑戦しようとしている時とか誰か助けを必要としている人がいるそういった場面で、一歩踏み出す人材というものを育成し、世の中に輩出していこうとしています。


―伊藤:ありがとうございます。分かりやすいです。研修のみならず様々な場面で役割を果たされているのですね。
研修をつくるうえで大変な事とかありますか。


松本:大変なことととしては僕自身でいうと正直なところないんですよ。今日も研修があるんですけど、何が大変かといわれると僕にはなくて難しいんですが、対面の研修をしている時に大変なこととしては自分の一挙手一動すべてが見られていると考えると緊張するところではあって、そのために前日に練習をするのですが、その上でも緊張することはやはりあって大変かなって思います。


―伊藤:確かに。人前で話すのは誰でも緊張しますよね。研修で前に出て話して、でも分かりやすいですし本当にすごいなと思っています。


松山:ありがとうございます。


ー澤:僕からも一点あるんですが、CMTインストラクターって、皆に教える立場なんで心肺蘇生法とか技術的な面で常にできるようにしておかないとだめだと思うんですけど、どれぐらいの頻度で練習をしているんですか。


松山:チームとしては、定期的に練成会というものをやっておりまして、少なくて月に四回ほど。研修前の時期など多い時はそれ以上やっています。そこでは、研修の準備や研修での伝え方の練習、実技の練習をしています。実技に関しては今期はオンラインで全員で集まってという形は難しかったので、3年生イントラに関しては自宅にBLS一時救命処置で扱うあんちゃんという人型の器材をお持ち帰りして定期的に練習するようにというお話はしています。
 個人的な話をするのであれば知識を身に着ける面で、実際ニュースとかで心肺蘇生の例を行った実例が挙がっていたりしたら逐一見るようにしたりだとかそういったことは心掛けながらやっています。これは、頻度とかは難しいですね。気づいたときや時間がある時にやっている感じです。


―澤:少なくて四回なんですね。すごいですね。ありがとうございます。

―伊藤:先ほども少しお話してくださいましたが、CMTインストラクターの研修以外での役割を教えていただきたいです。


松山:CMTといえば研修というイメージがあると思うんですけど、CMTが行っていることっていうのは先ほどもお話しさせていただいたリスクマネジメント、安全管理と人材育成でこれらは研修でもボランティア活動の現場でもクラブの中でもやることはどこ行っても変わらないのかなって思っています。プロジェクトでもクラブでも挑戦の場って広がっていると思っていて、でも挑戦には恐怖はつきものだしリスクもつきものだし、研修でもこんな話をするんですけど、一人ひとりが事前準備をしてもそれらは完全にはぬぐえきれるとは限らなくて、そんな中ですごい抽象的なことを言うとCMTイントラがいるから恐怖に負けないで挑戦しよう、全力を出そう、こちら側からしたら「俺らがいるから安心して挑戦しろよ!」みたいな立ち位置だと私は思っています。ただイントラ任せというわけではなくて、イントラ以外の人も挑戦する力や勇気を持ったうえで、挑戦に向けた準備をしていることが前提なので甘えられるというよりかは信頼できる役割かなと私は思っています。

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CMTインストラクターの皆さん

―伊藤:具体的にクラブやプロジェクトでイントラ側から特別アプローチすることはない感じですか。


松山:具体的というと難しいところではあるんですが、例えばプロジェクトで何も役職をもっていない一般隊員として参加したとしても、プロジェクトの中にMTっていう安全管理の立ち位置の人がいたとしても私たちも自発的に安全管理に臨んでいるようにはしています。そこで、具体的にどんなことをしているのかっていったら、これも難しくて、イメージとしては最前線で物事を俯瞰的に見ているような感じだと思います。すごい抽象的な回答をしていて申し訳ないんですけど…。


―澤:言っていることはすごくわかる!

―伊藤:見守っているけど何かすぐ対応する姿勢で常に身構えているような感じなんですね。


松山:そんな感じです(笑)。


インストラクターになったきっかけは?

―伊藤:じゃあ、お二人はイントラになったきっかけってありますか?


松本:僕の理由はとてもしょうもないんですよ。正直なところ言うと。報告会*2ってあるじゃないですか。僕が三年生の時に、報告会のロジマネをしてて。で、ロジマネ*3の管轄の中に「CMT劇」*4があったんですよ。で、技術を身に着ければ役立てられるかな、と思って修得したんですけどその時は全く役に立たなかったんです(笑)。
まぁこれ自体はきっかけにすぎないんですけど。ただまぁ気持ち的な意味では、「そういうこと(救命処置)ができない人間になりたくない」っていうのが大きくてここまで続けてきましたね。

松山:私は、興味を持ち始めたのは二年生の頃で。私たちが一年生の時って、CMT研修は必須じゃなかったから、二年生で初めて受けたんですよね。その時に研修取り仕切ってくださったイントラさんがすごいかっこよくて、漠然となんですけど「こういう風になりたいなー」って思ったからですかね。なので、最初のきっかけはただの憧れでした。ただ、そこからイントラになるまでの間に、命にかかわる事態に遭遇したんですよね。頭では助けなきゃいけないって理解してたんですけど、身体が動かなかったんです。研修も受けてきて、憧れまで抱いていたのに、その時動けなかったことがすごい後悔になって。そこから、「助けを必要としている人の前で無力になりたくないな」って考えるようなりました。加えて、私と同じような後悔を抱える人をこれ以上増やしたくないなとも考えてイントラを志しました。

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研修中の様子

―伊藤:うわぁ…。すごい、ちょっと圧倒されちゃいました。


一同:(笑)


インストラクターの経験を通して成長できたところは?

―伊藤:じゃあ、イントラを通して成長を感じたことは何かありますか?


松本:なる前と後だと、やっぱり視野がかなり広くなりました。自分のことだけでなく、様々な視点で物事を考えられるようになったという意味では、大きく成長できたのかなと思います。

松山:常に色んなことを想定できるようになったと思います。例えば、駅のホームで隣の人が線路に落ちたらどうすべきかとか、目の前で交通事故が起きたらどうすべきかとか、日常で起こり得る最悪の事態を想定しながら生活できるようになりました。


―伊藤:ありがとうございます。確かに、自分事として常に考えておくことってすごい大事ですよね。

―澤:CMTでしみついた習慣が、日常生活でも出てくる、みたいな感じなんですかね?


松山:そうかもです(笑)。


―伊藤:研修を受ける人にもそのレベルまでいってほしいと思いますか?それともそこまでいくとやりすぎかなと感じますか?


松山:やってもらうに越したことはないと思います。私としては、そのレベルにまでなってほしいですね。


インストラクターの魅力とは?

―伊藤:なるほど。ありがとうございます。では、記事を読んでくれた人にもイントラになって欲しいとのことでしたが、インストラクターの魅力を教えてほしいです。


松山:CMTに限らず他のイントラにも言えることなんですけど、人に教えるという役職柄、「伝え方」や、知識量が増えることは大きなメリットです。後は、たくさんの学生に出会えること、後日「研修の人ですよね!」と声をかけてくれる人がいることも魅力ですね。CMTならではの魅力であれば、やっぱりチームでの連携だと思います。普段前に出て喋っている人だけで研修も作っているわけではなくて、事前で色んな準備をする人もいれば、研修終了後に事後処理をしてくれる人、研修中に参加者を見て、そこから当日の細かい動きを考えてくれる人もいて、連携ができて初めて上手くいくといったところは魅力的ですね。それから色んな人がいるからこそ、どんな話も真剣にできるといった所も魅力だと思います。もう一つ言うのであれば、応援の術が増えるところですね。イントラになると間接的な応援みたいなのができるようになるんです。例えば、自分の大切な人が何かに立ち向かおうとしているとき、自分がその人の近くにいるとは限らないじゃないですか。そういった時に、CMTイントラでの経験を通して困難に立ち向かう力を得ていたら、それはある意味私たちとの経験からのエールともいえるし、困難に立ち向かっている本人の周りの人にとっても、その人の力は支えになると思います。「人材育成」を通して、人の支えや助けになる。ここが一番大きなCMTイントラの魅力ですね。

松本:俺喋ることなくなるやん(笑)。そうですね、今言ってくれましたけど、やはり知識がつくという点は大きなメリットですね。知識を付けることってゴールがないなって思ってて。経験を通すことで、無意識にある「自分はその知識をもっている」っていう慢心をなくせることが魅力だと思います。活動とかも通して、色んな知識のあるイントラの立ち振る舞いとかも見ることで、改めて自分事として技術を維持、習得できること、慢心を抜くことで成長の頭打ちをなくせることは、とてもいいですね。

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あなたにとってIVUSAとは?

―伊藤:ありがとうございます。質問の受け答えからも、お二人の普段からの人前で話すという経験が出ているように感じました。じゃあ最後に「あなたにとってIVUSAとは」、お願いしていいですか?


松山:私にとってのIVUSAは「飛行場」です。私自身は飛行機も航空についても詳しくないので、あくまでイメージとして聞いてほしいんですけど(笑)。
飛行機が飛び立つことが挑戦だとするなら、帰ってきたらメンテナンスとかもするじゃないですか。このメンテナンスは、色んな人との関わりで得た経験だったり反省だったりだと思うんです。私の立ち位置は、挑戦を続けるパイロットでももちろんあるんですけど、イントラとしては皆にいろんな経験を与えるメカニックでもあるように思っていて。なんとなく「これだ」と思ったのが「飛行場」でしたね。まぁ四年生なんで飛び立ったらもう二度と戻ってこないんですけど(笑)。後輩たちにもIVUSAという飛行場を舞台にして色んな事を頑張っていってほしいですね。

松本:「当たり前の場所」かなと思ってます。学年が上がるにつれIVUSAで活動すること事態が特別な思いがあるというよりは、むしろやってて当たり前のことのような感じで今まで生きてきたんですよね。言い方変えると、他の人ほど何か必死に考えているわけじゃないんです。そんな人間でもCMTイントラもこなせたので、是非、記事を読んでくれた人には挑戦してみてほしいなと思っています。

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松山さん
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松本さん

CMTイントラのお二人でした。お二人とも方向性は違えど、素晴らしい熱意を心に込めていましたね。CMTイントラ、現在募集中だそうです。記事を読んで興味を持った方は是非。編集後記:江口忍

 
インタビュー:伊藤咲季(國學院大学2年)澤雄太(神奈川大学4年)
編集:江口忍(法政大学4年)

*1:危機対応講習。会員向けの必須研修で、災害時の対応、救命措置などを学習する。学生により結成された運営陣は、インストラクターと呼ばれる。

*2:活動報告会。毎年春に行われる、IVUSAの一大イベント。

*3:ロジスティクスマネージャー。活動における裏方の全体的な統括。

*4:活動報告内で行われる演劇。突然災害に巻き込まれた学生達の反応を実際にIVUSA学生が演じている。